米大統領選の決着は、終盤までトランプ、バイデン両陣営が大接戦を続ける中西部重要州オハイオでの結果次第となってきた。最新の情勢分析は―。
「オハイオを制した者が大統領に」―古くからの定説通り、過去31回の大統領選挙中、29回で同州勝利者がホワイハウスの座を射止めてきた。とくに共和党にとっては、同州を落とした候補で大統領に選ばれたケースは史上1度もない。それだけに全米の趨勢を占う「先刻者bellwether」とも位置付けられてきた。
同州の中でも州都で最大都市コロンバス(人口78万人)は古くから、企業が新製品開発に際し、一般消費者の反応を事前に探る「テスト都市test city」として知られてきた。筆者もかつて取材したことがあるが、商工会議所には洗剤、医薬品、台所用品など幅広い分野にまたがり同市で試験的に販売され、後に新製品として全米でヒットした有名メーカーの成功例のパンフレットが数多く用意されていた。
時勢で変わる国民の平均的ムードを最も正確に反映しているとされる。それは選挙の場合も例外ではない。
そこでまず、前回まで過去10回の大統領選におけるオハイオ州での両陣営候補得票率と最終結果を振り返ってみることにする:
・1980年=カーター(民主)(現職)vs レーガン(共和)
レーガン51.51%→大統領へ
カーター40.91%
・1984年=レーガン(現職)vs モンデール(民主)
レーガン 58.90%→再選
モンデール40.14%
・1988年=ブッシュ(共和)(副大統領) vs デュカキス(民主)
ブッシュ 55%→大統領へ
デュカキス44.1%
・1992年=ブッシュ(現職)vs クリントン(民主)
クリントン40.13%→大統領へ
ブッシュ 38.35%
・1996年=クリントン vs ドール(共和)
クリントン 47.38%→再選
ドール 41.02%
・2000年=ブッシュ・ジュニア(共和) vs ゴア(民主)
ブッシュ・ジュニア49.97%→大統領へ
ゴア 46.46%
・2004年=ブッシュ・ジュニア vs ケリー(民主)
ブッシュ・ジュニア50.815→再選
ケリー 48.71%
・2008年=オバマ(民主) vs マケイン(共和)
オバマ 51.49%→大統領へ
マケイン46.92%
・2012年=オバマ vs ロムニー(共和)
オバマ 50.67%→再選
ロムニー47.69%
・2016年=トランプ(共和) vs ヒラリー・クリントン(民主)
トランプ 51.69%→大統領へ
クリントン43.56%
以上の結果が示す通り、過去10回すべてにおいてオハイオ州を制した候補が、例外なく当選または再選を果たしてきた。
それだけに、トランプ大統領は就任直後に「再選委員会」を立ち上げた際、早くからオハイオ州の存在をとくに重視、有権者支持取り付けのための同州遊説回数も昨年末までに15回と、50州中、断トツ最多を記録した。
今年に入ってからも、「2020年大統領選」本格選挙キャンペーン“旗揚げ”第1弾として1月半ば、同州トレド市での大規模集会に臨んで以来、すでに5回、州内各都市での遊説に足を運んでいる。このため、バイデン氏の民主党候補が最終的に確定した7月時点では、トランプ氏が支持率で10数%の差をつけ有利な戦いを続けてきた。
しかしその後、コロナウイルス感染が拡大する一方、バイデン陣営の反転攻勢が本格化するにつれて、同州での戦いは「大混戦」状態となりつつある。
トランプ支持色を濃厚にするTVメディアで知られる「Fox News」が、同州有権者を対象に9月20日から23日にかけて実施した世論調査によると、「バイデン支持」50%に対し、「トランプ支持」45%と、それまでリードを許してきたバイデン氏が初めてトランプ氏を上回った。同24日発表されたキニピアック大学世論調査では、「バイデン支持」48%に対し、「トランプ支持」47%と僅差だった。
これより先、「安泰」視していた同州情勢の流動化を心配したトランプ氏は去る21日、トレド市など州内の2都市での演説集会に改めて出かけたばかりだった。