都の購入と国有化
日中の認識差は大きい
中国側は都の購入より「国有化の方が実効支配の強化につながる」とみているようだ。報道されているように国有化後の避難港建設などもあり得るからだ。
野田首相は反中的な石原知事が尖閣を購入するより、国有化した方が「平穏かつ安定的に管理」できるとの判断をしたとみられる。しかし、中国の受け止め方は国有化の方がより深刻であり、その認識差は大きい。
7月13日付の人民日報は国有化方針についての論評で「釣魚島問題を制御できなくなる危険性がある」「日本の政治家たちはその覚悟があるのか」「国の核心的利益について譲歩するはあり得ない」と激しく批判した。
尖閣は核心的利益なのか
中国の外交官は「尖閣=核心的利益」という言い方を避けているが、今年に入って党機関紙、人民日報の一部論評や、党中央の指導者は尖閣と核心的利益を結びつけるようになった。(党対外連絡部長の王家瑞氏は5月22日、訪中した江田五月元法相との会談で尖閣=核心的利益と表現した)
核心的利益という言葉は、新疆ウイグル自治区やチベット自治区、台湾などについて用いてきた言葉であり、武力を用いても領土、主権を維持するとの強いニュアンスを持つ。
「文攻武嚇」(言葉による攻撃と武力による威嚇)とは主に1990年代、中国が独立志向を強める台湾に対してとった強硬政策だ。中国は尖閣問題で「文攻」の攻撃レベルを上げてきているわけだ。
「武嚇」としては、96年、台湾が初の総統直接選挙を実施した際、独立への一歩とみて、台湾沖にミサイルを発射する軍事演習で威嚇。米空母が二隻が台湾海峡に急派され、台湾海峡情勢が緊迫した。