2024年11月22日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2012年7月31日

 陳健・元駐日大使は石原氏について「彼がどういう人物かはよく分かっている。ああいう極端な人たちの声が聞こえないようにする必要がある」と述べ、石原知事と日本政府を分けて考える立場だった。

 一方、中国国防大学戦略研究所の楊毅・海軍少将は安全保障の分科会で「中国の軍事力増強は自衛のためであり、世界の平和と安定、繁栄に資する」と中国脅威論の払拭に努めた。

 同分科会は、狭隘なナショナリズムに走らず、日中間の偶発的な衝突を避けるため「危機管理メカニズムづくりや、中国軍と自衛隊、セカンドトラック(非政府間の協議の枠組み)の間の交流を通じた信頼醸成が必要」(宮本雄二・前駐中国大使)との認識を日中の参加者が共有した。

漁船衝突事件の「後遺症」

 フォーラムの主催団体が実施した日中共同世論調査では、日本人の8割以上が中国の印象を「良くない」と答え、2005年の調査開始以来、最悪となった。東京大学の高原明生教授は10年9月に起きた中国漁船衝突事件の「後遺症」と分析した。

 中国は同事件で中国漁船の船長が逮捕された後、全く関係のない日本人会社員4人を逮捕するなど、なりふりかまわぬ対抗措置をとった。日本政府は船長を釈放したが、中国の国際的なイメージは著しく損なわれた。

 中国側は公式には認めたがらないが、事件への反省に立ち、翌11年初めから日中国交正常化40周年の今年にかけ、対日関係の修復に努めてきた。今回のフォーラムもその延長線上にあった。

石原知事と野田首相で二人羽織?

 ところが、フォーラムが終わった数日後、野田首相が国有化方針を示すと、中国側は一気に態度を硬化させた。中国の外交筋は「石原知事と野田首相は二人羽織を演じているとの見方も出ている」「日本は友好を重視する対中政策を変更したのか」と猜疑心を隠さない。

 国内では共産党機関紙、人民日報や、その系列紙、環球時報で、尖閣の国有化方針を激しく批判し、国民の反日ナショナリズムを煽った。

 7月19日付の環球時報は「中国が釣魚島(尖閣)の主権を守るため、軍事行動を含めた手段を講じることに賛成か否か」との設問に90.8%が「賛成」と回答したとの世論調査結果を掲載した。


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