国有化実現後の5つのシナリオ
今のところ、尖閣国有化のスケジュールははっきりしない。地権者はまず都との交渉を優先。国の借り上げ契約は来年3月までであり、交渉がまとまれば、来年春には売買が行われる見通しだが、国は売買交渉に伴う都の上陸申請が出されても当面保留する方針。国は都に売却された後、買い上げるのか、あくまで地権者から直接買い上げようとするのかも不透明だ。
国有化が実現した場合、中国がどう出てくるのか。今のところは抑制的だが、国内で反日世論を煽っている以上、何もしないわけにはいくまい。可能性としては(1)中国公船の領海侵犯の日常化(中国最大の5418トンの最新鋭巡視船が7月28日に進水した) (2)多数の漁船を尖閣付近で操業させる(78年4月、100隻以上の中国漁船が尖閣領海に殺到) (3)経済貿易面での日本への嫌がらせや大規模な反日デモ (4)尖閣付近へのミサイル発射 (5)武力による尖閣侵攻ーなどが考えられよう。
過去の中国側の行動を見れば、(1)~(4)はどれも起こり得ることだ。(5)はさすがに中国も失うものが大きいため、簡単には実行できないだろうが、軍部の暴走もありうるので完全否定はできない。
準備不足の野田政権
尖閣国有化が実現すればけっこうなことだが、野田政権の準備不足など、いくつか心配なことがある。
野田政権は尖閣国有化を目指すなら、中国側の反応を予想した上で、対応を検討するなど入念な準備を行う必要がある。首相官邸を中心として外務省、防衛省、国交省、農水省、経産省などが合同で協議するべきだが、縦割り行政の中で「何もできていない」(政府当局者)という。
また、日中関係の大局を守りながら、尖閣国有化を行うというのは、至難の業だが、それが求められている。在京紙の社説は、国有化支持でまとまったが、多くの論調は都が購入するよりは穏当だろうと期待し、日中関係を損なわないようにと注文を付けている。
最後に衆院の9月、10月解散がささやかれる中で、野田政権、民主党政権がいつまで持つのかという点だ。政権がなくなれば国有化計画も立ち消えになるのか、そうなるとやはり都が購入するのか、先が読めない不安感が漂うのだ。
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