2023年2月8日(水)

食の安全 常識・非常識

2012年8月8日

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松永和紀 (まつなが・わき)

科学ジャーナリスト

1963年生まれ。89年、京都大学大学院農学研究科修士課程修了(農芸化学専攻)。毎日新聞社に記者として10年間勤めたのち、フリーの科学ジャーナリストに。主な著書は『踊る「食の安全」 農薬から見える日本の食卓』(家の光協会)、『食の安全と環境 「気分のエコ」にはだまされない』(日本評論社)、『効かない健康食品 危ない天然・自然』(光文社新書)など。『メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学』(同)で科学ジャーナリスト賞受賞。2021年7月より内閣府食品安全委員会委員(非常勤、リスクコミュニケーション担当)。(記事の内容は、所属する組織の見解を示すものではなく、ジャーナリスト個人としての意見に基づきます)

 いわゆる健康食品の中には、ヒトで確認しておらずマウスや細胞での実験結果しかなかったり、論文として発表されていなかったりするものもたくさんありますので、この点でもトクホは信頼がおけます。

生活習慣病の「境界線上にいる人」が対象

 ただし、気になる点も。

 トクホは、同種の食品を摂るよりは、トクホを同じ量摂った方が健康の維持増進に寄与できる、という位置づけです。「トクホだから、どれだけ食べてもいい」というわけではありません。「トクホの油だから、どんなに揚げ物を食べても大丈夫」なんてうまい話はありません。

 また、医薬品とは違い、劇的な効果はみられません。トクホに切り替えたら、乱暴な食生活をしても大丈夫、というようなものではないのです。そのことが、消費者にきちんと伝わっていないのでは、と思えます。

 それに、トクホは食生活が原因となって起きる生活習慣病に「罹患する前の人」や「境界線上にいる人」を対象としています。企業が効果を確認した試験も、健康体から不健康体へ、ぎりぎりのところにいる人を対象に行ったものがほとんどです。「血中中性脂肪や体脂肪が気になる方」向けの食品であれば、軽度のコレステロール血栓者や境界域の人を対象とした試験だったり、あるいはBMIが24~25程度の人だったりします。BMIは、25以上で肥満ですから、体脂肪が相当に付いている人たちです。

 こういう人たちの健康が、トクホでない食品を食べるよりは少し改善される、というのがトクホ。テレビCMでは、スマートな俳優や女優がさっそうと宣伝していますが、トクホを摂取したからといって、あのような体型になれるわけではありません。

 たとえば、メッツコーラの効果を示す論文を読むと、試験の対象者は「空腹時血中中性脂肪値が正常高値域からやや高め」の90人が対象でBMIの平均は26.1。この人たちに、メッツコーラと、関与成分の難消化性デキストリンが入っていない対照飲料を飲ませて比較したところ、メッツコーラの方がわずかに、中性脂肪の上昇が抑えられたという結果です。鍛えているジョーに効果があるかどうかは、この実験からは言えません。

 また、摂取するタイミングなども注意が必要。今話題のメッツコーラや黒烏龍茶は、脂肪の吸収を抑えるものなので、脂っこい食事をする時に一緒に摂らないと意味がありません。

健康のためには
バランスのよい食事や運動を

 要するに、トクホは食べさえすれば不摂生な生活をチャラにしてくれる、というようなものではありません。生活をなにも変えずに、油をトクホの油に切り替えたり、飲み物をトクホ製品に切り替えたりするのと、トクホを摂らずにバランスのよい食事に切り替え運動をはじめるのと、どちらが効果的か? 圧倒的に後者である、と断言できます。

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