2024年12月14日(土)

食の安全 常識・非常識

2012年4月4日

 あなたは、がんを予防するためになにをしていますか?

 内閣府が、全国20歳以上3000人を対象に2009年夏に調査を行い、結果を公表しています。第1位は「焦げた部分を避ける」で43.4%でした。

 おそらく、まともな医療関係者で「焦げ」をがん対策として重視している人はいないでしょう(理由は後述します)。残念ながら、市民の意識と実際に効果のあるがん予防策には少々、ずれがあるのです。

 インターネットを検索すると、「がんを予防する食生活」や「がんに効く食品」も山ほど紹介されています。昨年は、放射性物質を排出しがんを防ぐとして、いくつかの食品がテレビや雑誌などで取り上げられ、ネットにも情報が氾濫しました。が、これらも、科学的根拠を探っていくと、あやふやです。

 今回は、科学的に妥当な「がん予防にいい食生活」を考えます。

なぜ、「焦げ」は重視されないか?

 焦げの誤解は、40年近く前に全国紙が「焼き魚の焦げに発がん性がある」と国立がん研究センターの研究結果を伝えたのがきっかけ、と言われています。

 たしかに、魚や肉の焦げには「ヘテロサイクリックアミン類」(HCA類)という、DNAを傷つける力を持つ「遺伝毒性発がん物質」が含まれている場合があります。

 アミノ酸やタンパク質が高温で加熱されることにより、変成してできるもので、ラットやマウスに大量に与える実験で、がんが発生することがわかっています。したがって、人が焦げを大量に食べ続けるのなら要注意。でも、そんな状況は通常の生活ではあり得ません。

 食品安全委員会の2009年度委託調査報告書によれば、焼いたり揚げたり薫製などにした市販加工食品には、HCA類はほとんど含まれていません。調理法の影響を調べたところ、フィッシュロースターによる加熱やフライではHCA類は検出されず、ホットプレート調理も検出はごく微量。直火で片面5分ずつ、かなり焦げ目が入るほど強めに焼いた時のみ、HCA類が比較的高濃度で検出されました。直火でも普通の火加減では、あまり検出されていません。

リスク検討では摂取量も重要

 専門家がリスクを検討する場合、その物質がそもそもどの程度の有害性を持つか、ということと同時に、どの程度の確率でそれに遭遇するか(食品で言えば、どの程度の摂取量があるか)を問題にします。

 魚や肉の焦げの場合、発がん性はありますが、摂取量は多くはないので、がん予防対策の優先順位としては高くないのです。「バーベキューや焼き鳥の焦げは美味しくないから食べないよ」くらいの感覚で、対策は十分だと私は思います。

 ちなみに、誤解を防ぐために書いておきますが、米飯や野菜はタンパク質、アミノ酸をあまり含んでいないのでHCA類はできず、これらの焦げを心配する必要はありません。

普通の自然の食品に、発がん物質が含まれる

 では、がんを予防するためには、どのような食生活を送ったらよいのでしょうか? 無農薬? 無添加? 健康食品を多く摂る?


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