意外に知られていない
「減塩」のがん予防効果
意外に知られていないのが食塩摂取の問題です。塩辛い食事というと、高血圧や脳卒中リスクを想像しますが、日本人を対象とした大規模な疫学調査で、がんとも密接なかかわりがあることが明らかとなっています。特に、塩辛い干物や塩蔵卵(筋子、たらこなど)を多くとる人はがんリスクが高く、特に、胃がんのリスクは大きくはね上がるのです。
日本人は昔、漬物や干物、塩蔵卵等、塩辛いおかずちょっぴりで、お米をたくさん食べていました。日本人の食塩摂取量は戦前、20gを超えていたとみられています。戦後、減塩運動が盛んになり摂取量は減りましたが、現在でも男性で1日平均11.4g、女性で9.8g食べています(2010年国民健康・栄養調査より)。見かけ上は食塩の平均摂取量は年々減っていますが、これは高齢化に伴って食事を食べる量自体が減っているためで、食事の薄味化は進んでいない、とみられています。
拡大画像表示
日本人の食事摂取基準(以前は栄養所要量と呼ばれていました)は5年ごとに改訂されていますが、最新の「日本人の食事摂取基準(2010年版)」では、今後5年間に達成したい食塩摂取の目標量は男性で9.0g未満、女性は7.5g未満です。
これでも世界的な水準から見れば高めで、WHOのガイドラインは目標が1日6g未満です。この数字は、日本人にとってはあまりにも非現実的なので、食事摂取基準では実現可能な数字にしてある、という状態です。
「放射性物質を排出しやすい食品」はない
さらにもう一つの「ちなみに」、ですが、福島第一原子力発電所事故後、体の中に入ってしまった放射性物質を排出しがんを防ぐ効果があるなどとして味噌や一部の健康食品などがテレビや週刊誌などで紹介されました。
しかし、これらは動物実験のみに基づいた効果であったり、人が現実に摂取できる量とかけ離れていたり、そもそも実験に問題があったりで、科学的に信用できるとは言い難いもの。放射性物質を排出しやすい食品は今のところ、確認されていません(詳しくは、科学的根拠に基づく食情報を提供する消費者団体のウェブサイト「Foocom.net」で解説していますので、お読みください)。
味噌がいいと信じ込んで、「和食がいい。味噌汁をたくさん飲め」と大々的に取り上げた全国紙系週刊誌もありましたが、味噌汁は1杯で2g程度の食塩を含有しており、何杯も飲むことは勧められません。食塩のリスクなどを考えるとむしろ、健康によいつもりが悪化するおそれがあるのでは、と私には思えました。味噌は、おいしい素晴らしい食品ですが、でも、食べ過ぎはいけません。何でも適切な量が肝心です。