2024年11月22日(金)

食の安全 常識・非常識

2012年4月4日

 科学者の多くはそうは思っていません。国立がん研究センターがまず勧めているのはバランスのよい食事を適切な量とることです。

 実は、発がん物質はごく普通の食品に含まれています。自然環境中にあり、米やヒジキなどにも含まれる「無機ヒ素」、炭水化物を高温で加熱することによってできやすくフライドポテトなどに比較的多い「アクリルアミド」などが、よく知られています。一部のカビが作る毒性物質「アフラトキシン」も強力な発がん物質です。これらは、HCA類と同じように、DNAを傷つけ細胞ががん化へと進むきっかけを作ります。

 また、発がん物質の中には、遺伝子を傷つける作用はありませんが、傷ついてできた異常細胞の増殖を促す作用を持つものがあります。食塩やアルコールなどはこの作用があり、野菜などにもごく微量ながら多種類含まれている、と考えられています。

 したがって、「発がん物質を食べ物からとにかく排除」という考え方では、暮らしていけません。そして、ごく普通の食品が発がん物質を持つ一方で、おいしさや豊富な栄養、がんへと進む反応を抑える働きを持つ物質なども持っていたりします。そのため、そうそう単純に「あれはいい」「これはダメ」などと言うことはできないのです。

「がんに効く」報道には、要注意

 特定の食品が、「○○にがん予防の可能性」などと新聞やテレビなどに取り上げられ、健康情報番組などでも特集になり大流行となるケースもこれまで、ありました。しかしそれらのほとんどは、細胞レベルや動物実験の結果。往々にして、人間の通常の食生活ではあり得ないような量を投与して調べています。また、その物質が代謝系に届くルートや働き方も細胞や動物と人では異なるので、これらの実験で効果があったからといって、人に「効く」というわけではありません。むしろ、「効かない」ことがほとんどです。

 しかし、研究者は評価されて研究費を獲得したい、という気持ちが強く、どうしても自分にとって都合のよい部分を強調します。また、マスメディアもその方がニュース性があるので、バイアスのかかった報道をします。がん予防の話ではありませんでしたが、2007年に起きた「発掘!あるある大事典Ⅱ」の納豆のダイエット効果を巡る捏造報道を思い出していただければいいでしょう。なにか特定の食品に「がん予防」と報じられた時には、相当に割り引いて受け止める必要があります。

 そして、またもや「ちなみに」、ですが、農薬や食品添加物は、発がん性試験やほかの毒性試験がかなり詳細に行われ、問題がないことが確かめらないと使用を認められません。それに、そのリスク評価や管理方法の決定には、食品安全委員会や農水省、厚労省などの審議会などで大人数の科学者がかかわっています。諸外国の実験結果や結論なども考慮して、国内で農薬や食品添加物として認めるかどうか検討し、決めています。

極意は節度のある飲酒、バランスのよい食事

飲酒する場合は、1日あたり日本酒なら1合、ビールなら大瓶1本、焼酎や泡盛なら2/3合、ウイスキーやブランデーならダブル1杯、ワインならボトル1/3本程度。飲まない人、飲めない人は無理に飲まない。食事は、野菜果物は1日に合わせて400g程度は食べるのが望ましい。食塩の摂取目標量は、男性が1日9g未満、女性は7.5g未満。熱い飲食物は食道を刺激するのでほどほどに冷ましたほうがよい
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 こうしたことを踏まえ、「国立がん研究センター」は、日本人の体質や食生活なども検討して、がん予防法を公表しています。禁煙や運動、節度のある飲酒はもちろんですが、食事で推奨しているのは、「食事は偏らずバランスよくとる」を前提として、次の3つです。

・ 塩蔵食品、食塩の摂取は最小限にする
・ 野菜や果物不足にならない
・ 飲食物を熱い状態でとらない


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