Washington Files

2020年10月26日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

 バイデン米政権が誕生した場合の対中国政策に早くも関心が集まっている。現政権以上に厳しいスタンスを貫く可能性もあり、中国側は警戒を強めている。

(cybrain/gettyimages)

 「バイデン氏が大統領となった場合、トランプ政権以上にタフな対中路線をより効果的かつ洗練された方法で打ち出していくことになるだろう」―去る9月23日付のニューヨーク・タイムズ紙は、米中関係に詳しい中国人民大学のCheng Xiaohe 助教授とのインタビュー内容を引用し、中国側にとってバイデン政権がきわめて手ごわい存在になるとの展望記事を掲載した。

 その具体的論拠として①バイデン氏は選挙戦を通じ、中国少数民族および香港に対する強圧政策、気候変動対応などについてより厳しい立場を表明してきた②バイデン大統領は、中国に圧力をかけていくのに同盟・友好諸国との連携を一段と強化していくことになるため、中国にとってより厄介になる③対照的に、トランプ政権は“アメリカ・ファースト”スローガンの下に同盟関係および国連をはじめとする国際機関を軽視してきたため、中国側の国際的影響力拡大のチャンスを与えてきた④民主党政権は労働組合との密接な関係を維持してきているため、対中貿易政策においても、トランプ政権以上にタフな姿勢を打ち出さざるを得なくなる―などの点を挙げている。

 さらに、米外交の“核心”でもある台湾問題についても、中国側は警戒を強める。

 アメリカはこれまで伝統的に、台湾が中国の攻撃にさらされた場合の対応について、「戦略的あいまい性strategic ambiguity」を維持してきた。これは、米国が強大な軍事力行使に踏み切るかどうかについて、最初から態度を明確にしないことが中国側の戦略判断を困難にさせ、かつそれが抑止力になるとの打算に基づいたもので、トランプ政権も歴代政権同様、基本的にこの立場を貫いてきた。

 バイデン氏はかつて、ワシントンポスト紙への寄稿文で「外交上、わが国が軍事力行使の権利を保留することと、アプリオリに台湾防衛にコミットすることとは明らかな違いがある」と述べ、あいまいなままにしておくことのメリットを評価したことがある。

 また、台湾当局もこれまで、米側が軍事力行使を文書などで明確にすることはかえって中国側の反発を招き、台湾海峡を危機に追い込みかねないとして、あいまい戦略をあえて黙認してきた。

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