2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年8月13日

 ASBCについて現役将校が最も詳しく述べたものに、本年2月のThe American Interest誌の原稿がありました。それによれば、「ASBCとは、敵が何層にも層をなして待ち構えているのを『ロール・バックする』のでなく、敵がたとえどこにいようが遠方から深く叩けることを意味する。米軍による行動の自由に障碍となる敵の指揮通信系統、兵器の類を、戦いの初発段階で叩き、行動の自由そのものを保証しようとするもの」です。

 ASBCは、計画でなくコンセプトです。特定シナリオに向けどうこうするというものでなく、今後の米軍戦略全体に影響を及ぼそうとするものです。そうであるだけに、用いられている用語などは曖昧かつ理論的です。実際、コンセプトはまだごく初期段階にあり、2010年のQDR(4年に一度米軍が出す白書)に先立つ時期から議論が続いていた割に、具体的結果がさほど生まれていません。

 とはいえ、2011年11月に実施された演習は、第五世代戦闘機1機、前方展開の指揮命令中枢、洋上オペレーション・センター1カ所ならびに原潜1隻がさまざまな通信を交わしつつ、戦闘機が特定した敵目標に向け原潜がトマホーク巡航ミサイルを放つというもので、ASBCがどんな形態になるかを窺わせるものでした。ステルス潜水艦、ステルス航空機、無人航空機など用いた演習もなされるとのことです。

 米海軍、米空軍の配備、ドクトリンのあり方に対し、ASBCほど強い影響を与えつつあるコンセプトは他になく、先行きの重要さに鑑みこの構想くらい固いガードで表に出ないようにされたものもありませんでした。全貌を知っていたのは、ごく最近まで、ペンタゴンの限られたメンバーだけだったのです。

 しかし、以上見てきた点からからも分かるとおり、日本でおぼろげながらも描いていたASBCについての描像が、大きく間違ってはいなかったことが、再確認できます。

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