2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年8月16日

 北朝鮮の李総参謀長の突然の解任について、朝鮮半島情勢に詳しいスナイダー(米外交問題評議会上席研究員)とクリングナー(ヘリテージ財団上席研究員)が、解任劇勃発直後に、相次いで論評を発表しています。

 スナイダーは、7月17日付で外交評議会のウェブサイトに掲載された記事において、李英鍋解任は、軍の反発を招き北朝鮮指導部内の新たな対立に繋がる懼れがあると論じています。

 すなわち、李英鎬解任が金正日の描いた後継体制構想に反するものであったとすれば、北の指導部は海図の無い海に乗り出したことになる。

 張成沢と崔竜海が軍の不満を抑え込むことが出来れば良いが、それが出来なければ、北朝鮮は指導部内に新たな対立を抱え、極めて危険で不安定な情況になる。大統領選を控える韓国、米国にとっては困ったタイミングとなる、と述べています。

 一方、クリングナーは、7月19日付のWSJ紙に掲載された論説において、李英鍋が崔竜海軍総政治局長との権力闘争に敗れただけのことであり、改革を巡る政策論争の結果と見るのは幻想である、と主張しています。

 すなわち、李解任の理由としては、四つのPが考えられる。

 第一に権力(power)闘争だ。金正恩が地位固めを更に進めるために側近を切ったのか、或いは、古くからのエリート層が大胆にも正恩の側近を攻撃する拳に出たのか、外部からは窺い知れない。

 第二に党と軍を同格(parity)とするかだ。金正日体制下では国防委員会に権力が集まり軍優勢であったが、正恩の下では党の中央軍事委員会に権力が移行しており、李解任も軍部の力を弱めるためかも知れない。

 しかし、李解任は、むしろ、人的関係(people)が原因ではなかろうか。李は正恩への取り入りをめぐり、ライバルの崔竜海に負けたとの噂が広まっているからだ。


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