2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年8月28日

 米国ASB作戦計画担当者は、例えば中国本土に対する攻撃を除外するなど、米中エスカレーションの危険を減少させ、挑発的でない作戦計画と忍耐を強調する選択肢をも真剣に検討すべきである、と論じています。

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 ASBを核抑止論の視点から論じた興味深い小論です。Rovner氏が指摘するように、ASBを提唱した関係者が、ASBと核戦争との関係を十分検討した形跡はないようです。恐らく、ASBは在来型戦争の延長というのが前提だったのでしょう。

 他方、Rovner氏の議論にも弱点はあります。仮に、ASB概念がなくても、米軍の宇宙・サイバーを含めた高度な在来型攻撃能力が高まれば、当然中国との核エスカレーションの問題は生じるからです。

 Rovner小論の真の意味は、これまで米国の核戦略プランナーたちの核抑止論の対象が主としてロシアであり、中国の核戦力については必ずしも十分関心を払っていなかったということでしょう。今回の小論は、最近の中国の戦略核戦力の急速な向上に伴い、米国の識者が将来の「米中核パリティ」をも念頭に置いた核抑止を真剣に議論していることの証左かもしれません。

 それにしても、中国本土へのASB攻撃の有無を中国に対し確認することは、核エスカレーションの敷居を上げることには役立っても、ASBの抑止力を減殺しかねない危険を内包しています。

 今回のRovner氏の問題提起を踏まえ、米国において、中国の核戦力と核抑止の問題について、更に議論が深まることを期待したいと思います。

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