「今でも十分に美味しいものを食べさせてくれるけれど、二人でこれからどんな面白いものを作り出していってくれるか」
それがまた楽しみ、と津村さん。おまかせのコースをいただきながら、そんな話をしていたのだけど、確かに。納得。
おだしの具合も好ましい、お椀や炊き合わせ。基本がしっかりしていると知れる、お造りや焼き物。そして、福岡県の女将の実家で作っているというお米を土鍋で炊いたご飯の滋味に、合わせる佃煮や漬物のような細かいところまで、よろしい。お値段を考えると、お得であることも間違いない。
そして、初々しくもきちんとしている客との距離感、居心地の良さもよろしい。酒が進んで困ってしまいそうな店。
さて、津村さんの弟子が京都に開いた店、「祇園 大渡(おおわたり)」のように、予約も大変にならぬか。出来ることなら、これから二人が作り出していくであろう物語を、見続けていたいと思わせるものがあるが、そう思わせるところは、たいてい、人気店になっていくのが常のようでもあり……。
ともあれ、今日のところは満ち足りた。ただもう少し、飲み足りぬか。日本酒は十分だから、もう少し何か違うものを。
新地の方のバーにでも流れてというのもよろしいが、気分はもう少し、ワインを、そう、赤ワインが飲みたい。