2024年4月27日(土)

Wedge REPORT

2012年9月24日

――これまでの三重県の企業誘致をどう評価しますか。

鈴木知事:シャープ亀山工場を誘致した結果、関連企業も含めると2004年の操業開始時に比べて2.8倍の7100人の雇用を生み出しました。県税収入も2010年には30億円、累計で300億円になり、雇用と税収で一定の効果がありました。

 ただこれまでは補助金以外のアイディアが乏しかった。行政は薄く広くやりたがるが、それでは他の自治体には勝てない。いかに深掘りしていくかが重要になってくる。幸い、三重県には現場から情報を取ってきてくれる職員がいるので、トップである私も深く関わっていくことができる。

――県外から企業を呼び込むだけでなく、県内産業の振興も重要ではないですか。

鈴木知事:昨年度、私も含めて県職員総出で県内企業1000社あまりを直接訪問し、経営者の生の声を聞きました。民間企業の営業担当者であれば外回りは当たり前かもしれないが、全都道府県のなかで県職員がこれだけの企業を周ったところはない。それが現状だった。

 県内企業の海外進出を支援するため、地元の百五銀行と野村證券に業務委託して上海とバンコクに県のサポート拠点を設けました。マクロ戦略だけでは机上の空論となりかねず、これからは現場感のある戦略が必要です。

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 鈴木知事が言うように、シャープ亀山工場の誘致は三重県に雇用と税収両面で恩恵をもたらした。だが雇用者数の推移をみると、リーマンショック直前08年5月に8600人だったのをピークに、昨年5月には7100人まで落ち込み、税収も06年度には65億円あったものが、09年度には2.4億円まで激減。景気の影響を受けやすいことが分かる。

 また製造品出荷額は、全都道府県で9位の三重県だが、付加価値率(=付加価値額÷製造品出荷額)は42位(09年)と、立地している工場が多い割に付加価値の小さい汎用品の生産拠点であることを示している。

 企業誘致のライバルは、もはや国内の自治体だけにとどまらない。生産コストが低いうえに、法人税など国税の減免措置がある韓国や中国、東南アジア諸国とも競争していかなければならない。いかに既存企業の体力を強化し、地域の魅力を高めて高付加価値企業を誘致できるか、先陣を切って旧来型企業誘致からの転換を図る鈴木知事の手腕が試される。

*以上の記事は、WEDGE10月号特集の一部に加筆したものです。

WEDGE10月号特集 『相次ぐ企業撤退 誘致頼みは限界に』
◎撤退後対策に知恵出す人々
・宮崎県都城市「従業員による買収(EBO)」
・千葉県香取市「跡地の無償提供」
・広島県庄原市「外資導入」
◎「失敗」の産業政策 シャープ亀山誘致
・鈴木英敬三重県知事「補助金ありきからの転換」
・岡田知弘京都大学教授「地域経済に恩恵少ない企業誘致」

◆WEDGE2012年10月号より

 

 

 

 

 

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