G党も安堵の表情を浮かべたかもしれない。巨人が21日、本拠地・東京ドームで行われたオープン戦最終戦で東北楽天ゴールデンイーグルスを相手に8―4で快勝。オープン戦1号を放った坂本勇人内野手、主砲の岡本和馬内野手がそれぞれ複数安打をマークするなど計11安打で打線が久しぶりに機能し、シーズン開幕に向けて有終の美を飾った。
その一方で、この日は非常に興味深いシーンもあった。ベンチの原辰徳監督がゲーム開始早々からイラ立ちを露にしたところである。先発マウンドに立ったのは開幕3戦目の登板が内定している左腕・今村信貴。初回先頭こそ1球で打ち取ったものの一死から連続四死球でピンチを招き、その後も暴投、先制適時打、押し出し四球、中犠飛でいきなり3点を失った。
初回だけで27球を要し、被安打2、3四死球3失点の大荒れ。今村は2回にも辰巳涼介外野手に特大ソロを浴び、序盤は明らかにピリッとせず多くの課題を残す内容だった。さすがに黙ってはいられなかったのだろう。原監督はイニング間のベンチで今村とバッテリーを組んだ大城卓三捕手を呼びつけて横に座らせ、厳しい表情で何やら言葉をぶつけた。
試合後、原監督は大城に対し、2ストライクに追い込みながらも「逃げ」の姿勢から四球となった弱気のリード面について直接指摘したことを報道陣に明かしている。何かとソフト路線が支持される時代背景もあるのだろうが、昨今のプロ野球界では指揮官が選手を〝公開説教〟するような場面がほとんど見られなくなっていた。
しかしながら原監督はそんなことなどまったく気にしない。口うるさいことを言えば当然のようにウザがられるかもしれないが、それも覚悟の上。本人、ひいてはチーム全体のためになるならば率先して嫌われ役となることも厭わないのであろう。それぐらい、もう原監督はジャイアンツ、いや球界全体の中でも達観した存在になっている。
それは、これまでの軌跡を振り返ってみても一目瞭然だ。昨季はついにV9時代の指揮官・川上哲治氏を超える監督通算1067勝目をつかみ、巨人では単独最多の監督勝利数となった。現在〝第3次政権〟で連続ではないとはいえ、通算在位年数も今季15年目で巨人史上歴代1位。リーグ優勝は2度の3連覇を含む9回、そのうち日本一も3回と文句なしの輝かしい成績を残している。また、2009年の第2回WBCでは日本代表・侍ジャパンを率いて世界一連覇。2002、2009、2012年と3度にわたって正力松太郎賞に選ばれ、2018年には野球殿堂入りも果たした。
ここまで十分過ぎるほどに多くの功績を築き上げてきた原監督が今季は3年契約の最終年を迎える。後任監督候補として名が挙げられているのが、阿部慎之助二軍監督、そして桑田真澄投手コーチ補佐らである。今季は自身通算3度目のリーグ3連覇を果たし、昨季まで2年連続で日本シリーズ4連敗を喫する〝煮え湯〟を飲まされ続けたソフトバンクと願わくば日本一をかけて戦い、今度こそリベンジを果たしたい――。
原監督は間違いなく、そのような強い願望を抱いていることであろう。そして大願成就を果たせば〝やり残したことはない〟とし、今オフに阿部二軍監督、もしくは桑田投手コーチ補佐ら後任候補へG指揮官のバトンを託す可能性は高い。
それではちょっと気の早過ぎる話題かもしれないが、巨人指揮官退任後の原監督が目指す次のステージは一体どこになるのだろうか。なぜこのように唐突な話をするのかと言えば、実は球界内から原監督に今「コミッショナー就任待望論」が意外に多く向けられているからである。
NPB(日本野球機構)ではコロナ禍の現在、斉藤惇コミッショナーが敏腕をふるって様々な議題に対して懸命に取り組んでいる。だが以前からコミッショナー権限ではどうしても踏み込めない案件も多く、そのたびにセパ各球団や現場をやきもきさせてきた側面があるところも否めないのが実状だ。