2024年11月21日(木)

Wedge REPORT

2021年3月8日

アントニオ猪木氏(写真は2017年、AP/AFLO)

 やはり〝燃える闘魂〟は不滅だ。元プロレスラーのアントニオ猪木氏が7日に自身の公式YouTubeチャンネル「最後の闘魂」を更新。病気療養のため入院中のベッドから寝たままの状態ではあったが、はっきりとした口調で時折笑顔も交えながら力強く拳を突き上げて得意の「1、2、3、ダーッ」を披露した。

 昨年7月25日、心臓の機能が落ちて全身に十分な血液を送れなくなる難病「心アミロイドーシス」を患い、闘病中であることを告白。2年前から腰の治療も行っており、現在の体調について猪木氏は動画の中で「少しずつなんですけど、まあ良くなってきて」と落ち着いた口調で語っている。

 そして「とにかくこんな状況でも猪木が一生懸命闘っているという姿を今日は見ていただければいいなと思います」と述べてから、動画の最後には「まあ早くね、私も元気を取り戻して皆さんの前で大声で、今日はちょっとできるかな…。やりましょうかね、やっぱり。いくぞ! 1、2、3、ダーッ!」と声高らかに叫ぶ元気な姿も見せた。

 続けて「これの3倍、4倍の〝1、2、3、ダーッ〟を早くできるようにしますんでね。そういうことで、一日一日俺も変わって元気になっていきますから。もう一つ元気になったらそれでまたその後はもっと元気になったっていうね、猪木を発信しますんで、よろしく」とメッセージを口にし、長々と語りながら約11分間に渡る動画をきっちりと締めていた。

 実は業界内で先月下旬頃から猪木氏に関しては健康面への危機説が流布されるようになり「本当に大丈夫なのか」「〝まさか〟のことになっているのでは」などと不穏な流言まで飛び交うようになっていた。こうした怪情報によって、多くのメディアの間でも緊張が走っていたのである。しかしながら、猪木氏ら関係者はすぐに今月1日に自身のYouTubeチャンネルにリハビリ動画を投稿。これにより〝まさか〟のウワサを打ち消す形となった。

 とはいえ、この動画に収録されていたシーンは猪木氏の言葉が一切なく、パジャマ姿のまま理学療法士とベッドの上でリハビリを行う様子のみ。猪木氏が懸命に体調不良と闘う姿には感動を覚える人が多くいた一方、それまで見たことのなかった〝燃える闘魂〟の近況に衝撃を受けたファンもかなりいたようだ。

 だが裏を返せば、これも猪木流なのだろう。普通の人なら、弱り切った自分の姿を世にさらけ出したくはない。しかも猪木氏は超一流の元プロレスラーであり、スーパースター。辛く苦しいリハビリの一部始終を公開すれば、かつてリングで次々と強豪レスラーたちをなぎ倒してきたヒーロー像は崩れ去ってしまう危険性もある。

 それでも猪木氏はあえて動画公開の道を選んだ。もともとサプライズを好む側面があることに加え、純粋に〝まさか〟を危惧する声に対して「バカげたウワサを流すな」とくさびを打ち込む狙いもあったのだろうと思われる。逃げも隠れもせずに、いつ何時、誰の挑戦でも受ける――。そういうストロングスタイルをとり続けてきた猪木氏だけに、リハビリの動画公開は自然な流れだったと言ってもいい。

 そして6日後、今回のメッセージ動画公開だ。入院先とはいえ、はっきりとした口調から元気よく「ダーッ!」と拳を突き上げた猪木氏には世間の多くのファンも胸を撫で下ろしたことだろう。前回公開した言葉のないリハビリ動画では、ネット上やメディア関係者の間から「さすがに猪木さんも弱り切ってしまったのではないか」「もう表舞台に出てくることは厳しいのでは」などと憶測交じりで心配する声も多く出ていたが、それもキッチリと打ち消して一件落着させたと言える。

 猪木氏の体調が「完ぺき」でないことは残念だが、間違いない。でも世の中には、まだアントニオ猪木が必要だ。


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