Wedge REPORT

2021年3月8日

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〝最後のロマン〟

 ちなみに猪木氏は今、世界的に問題になっている環境汚染への対策として「プラズマ」を使った廃棄物処理の実現へ向けて第一人者の九州大学・渡辺隆行教授らとともに動いている。猪木氏が現役時代から好んで使う言葉の「男のロマン」という表現を借りれば、この「プラズマ」は〝最後のロマン〟とも評すべき究極目標であり、ぜひ実現させてほしいところだ。

 そして何より、喜寿を迎えた人生のラストロードにおいても「男のロマン」を追求し続ける生き様こそ猪木氏の真骨頂。プロレス界のレジェンドが元気な姿を見せ続けてくれることで、かつて燃える闘魂・アントニオ猪木の闘いぶりに胸躍らせた昭和世代の多くのビジネスパーソンたちも勇気と活力を与えられるはずである。

 思えば、猪木氏は数多くの名勝負を繰り広げただけでなく、それに伴って世の中に一石を投じる破天荒な仕掛けも連発してきた。日本プロレスから独立後、1972年に新日本プロレスを旗揚げ。1976年からは異種格闘技戦を開始し、WBA・WBC統一プロボクシング世界ヘビー級王者のモハメド・アリやミュンヘン五輪金メダリストの柔道家ウィリアム・ルスカ、熊殺しの異名を持つ空手家ウィリー・ウィリアムスらを同じリングに上げるなど一世を風靡した。特に15ラウンド引き分けに終わった同年6月のアリ戦は当時こそ世紀の凡戦とまで酷評されたが、現在は屈指のリアルファイトとして格闘技界でも語り継がれている。

 同じ年の12月にパキスタンのカラチで行われた同国最強レスラーのアクラム・ペールワンとの一戦は、約8万人の大観衆を集めた完全アウェーの中において相手の左腕をチキンウイング・アームロックで脱臼させ、勝利するというプロレスの範疇を完全に超えた〝伝説のセメントマッチ〟として今でも語り草だ。 

 プロレスの試合で言えば、日本人対決のストロング小林戦、大木金太郎戦は昭和の猪木人気を決定付けた名勝負。NWF認定ヘビー級王者としてタイガー・ジェット・シンやスタン・ハンセン、アンドレ・ザ・ジャイアントらとの死闘を繰り広げたことももちろんそうだが、やはり自らが「真の世界最強を決める」と提唱して設立したIWGPヘビー級のベルトを巡るハルク・ホーガンらとの名勝負も忘れられない。

 人材育成の能力も猪木氏は群を抜いている。新日本プロレスで弟子として育てた藤波辰爾、長州力、藤原喜明、前田日明、佐山聡、高田延彦、武藤敬司、蝶野正洋、船木誠勝、藤田和之ら…列挙すればまだまだキリがないぐらいに多くのスターをプロレス界、あるいは格闘技界へ輩出。ひも解いて流れを辿っていけば、昭和から平成期にかけた〝猪木イズム〟を頂点とする新日本プロレスのヒエラルキーはプロレスだけでなく現在の総合格闘技の発展にもルーツとして寄与していたことが分かる。

 元気があれば、何でもできる。コロナ禍で閉塞感漂う世の中の表舞台に猪木氏が再び復帰し、いつもの名文句とともに闘魂を注入してほしい。ここまで何度も逆境に追い込まれながら這い上がって我々の驚くようなことをやってのけ、万人から支持を得た〝燃える闘魂〟ならば必ず復活できると信じている。

  
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