Wedge REPORT

2021年2月15日

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 おそらく〝球春早々の風物詩〟と受け流している人が大半だと思う。日本ハム・斎藤佑樹投手のことだ。沖縄・国頭で行われている二軍春季キャンプで2月1日の初日からブルペンに入り、いきなり200球を投げ込んだ。

 昨年10月に右ヒジ靱帯の断裂が判明し、さすがに現役引退かとささやかれたが、またしても球団から肩叩きは受けずに温情をほどこしてもらった。右ヒジの早期回復を最優先に再建手術ではなく保存療法(PRP療法)を選択し、年明けの1月上旬からはブルペン投球をリハビリメニューに組み込んでいる。だから冷静に考えれば、キャンプ初日からのブルペン入りはそこまで驚くべきことではない。キャンプインから球数が200球に達した点は、確かに約4カ月前に右ヒジ靭帯断裂が判明した割には比較的早いスピードでリハビリが順調に運んでいると解釈できるし、喜ばしいことだろう。

(33ft/gettyimages)

 12日に二軍キャンプを視察した栗山英樹監督はメディアから「順調に回復を遂げている斎藤についてどう思うか」と問われると「ビックリしました。本当によかった。『どうしちゃったんだよ、佑樹』というくらい」「ああいう表情で野球やっているのを見ると、涙が出ちゃう」などと再三に渡って持ち上げまくっていた。このニュースが各メディアによって一斉に報じられると、ネット上もたちまち「『どうしちゃった』のは栗山監督のほうです」「いい加減、斎藤佑樹ばかりをヨイショするのはもうやめてほしい」などと辛らつなコメントで埋め尽くされていた。案の定の結果と言っていい。

 栗山監督の斎藤に対する〝過保護路線〟は別に今に始まったことではない。どちらかと言えば、日本ハムは以前から球界内においてMLB(メジャーリーグ)のようにフロント主導でチーム編成が決められる傾向が強いことで知られている。その流れを鑑みれば、斎藤が特別扱いを受けるかのような立ち位置となっているのは当然のように球団幹部の意向も大きく反映されているはずであろう。

 その〝過保護路線〟を招く原点となったのは、もちろん2006年の夏の甲子園である。早稲田実業の斎藤は当時、駒大苫小牧・田中将大投手と引き分け再試合を含む2試合を連日に渡って投げ合い、伝説のエース対決を制した。その後は早実から早稲田大学へ進学。野球部のエースとして名を馳せ、2010年のドラフトで1位指名された日本ハムへ入団を果たした。

 入団前までは日本ハムも斎藤に対して〝佑ちゃんフィーバー〟も当て込み「チームを支える不動の大エースになってくれるはず」と考えていた。ところが、そのシナリオは早々と暗礁に乗り上げた。ルーキーイヤーの2011年にマークした6勝が自己最高の勝ち星となり、プロ2年目の2012年は自身初の開幕投手に選ばれて埼玉西武ライオンズを相手に9回1失点でプロ初完投勝利を飾るなど順調なスタートを切ったかと思いきや、終わってみれば僅か5勝止まり。その後も2013年・0勝、2014年・2勝、2015年・1勝、2016年・0勝、2017年・1勝と白星を挙げることすらできなくなっていった。そして2018年以降は未勝利が続いており、ついに昨季はプロ入り後初めて一軍昇格なしのままシーズンを終えた。

 今思えば、プロ2年目の夏場に右肩の違和感を覚えながらも痛みをごまかしながら投げ続けていたことが、結果として己の身を削ってしまったようだ。2012年シーズン終了後の11月に右肩は関節唇損傷と診断され、プロ3年目以降は輝きを失って「大エースへの道」も完全に潰えた。

 それにしてもここ数年疑問が消えないことなのだが、日本ハムはどうしてこれだけ戦力にならない斎藤と契約し続けるのだろうか。未だに「ハンカチ王子」や「佑ちゃん」と呼ばれていた高校時代の栄光にすがるように、これから咲くこともない枯れ切った花を延々と育てているようにしか思えない。世間の多くから激しいバッシングを浴びせられていることは百も承知のはずだ。

 斎藤がプロ11年目の春季キャンプでリハビリを重ねている今、あらためて球団関係者の1人に尋ねてみると「すべてはオーナーや球団社長、GMら幹部の考えなので〝正解〟かどうかは不透明ですが」と前置きし、次のような見解を述べている。

 「斎藤が入団して数年ほどは佑ちゃんフィーバーによってグッズ販売や放映権料増額など、かなり大きな収入が球団に入ってきていた。やはり特別扱いと疑われるような契約や現場の接し方の根底にあるのは、こうした抜群の斎藤効果が未だに球団内で神話として生き続けていることも理由の1つでしょう。その額は年間で10億から多い時は20億円前後にまで達したともささやかれています。そのインパクトが根強く残っている。

 だから何だかんだと言われながらも斎藤は復活すれば反響は大きく、今のバッシングも風向きが変わって好転するはずだと…。上層部は〝夢よ、もう一度〟の気持ちで、そのように考えているのだと思います。こうやって炎上レベルで今も叩かれているのは逆に言えば、斎藤が未だに注目されていることの裏返しでもありますからね」

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