しかも、日中関係の悪化や緊迫をもたらす要因は「尖閣」だけには限らず、いわば「歴史問題」や東シナ海のガス田開発問題など、日中間の火種はいくつかある。
教育で浸透 「反日感情のリスク」
「日中関係のリスク」と並んで、日本企業の対中ビジネスが抱えるもう1つのチャイナリスクはすなわち「反日感情のリスク」である。
周知のように、1990年代以来、中国共産党政権が国内において反日教育を組織的・計画的に行ってきた結果、このような教育の中で育った20代、30代の中国人の間にはかなり激しい反日感情が浸透している。尖閣国有化後に中国で起きた史上最大規模の反日デモの主な参加者はまさに彼ら、20代、30代の若者であった。
そして今回のデモ発生と拡大のプロセスを見れば分かるように、普段はなかなか見えてこないこのような反日感情は、何らかの事件をきっかけにして突如爆発し、大きな破壊力をもって中国在住の日本人や日系企業を襲ってくることになる。また、現在の中国国内で広がっている日本製品の不買運動にしても日本への観光客が大幅に減少している背後にも、中国人の根強い反日感情が動いているのであろう。とにかく、「反日感情」という目に見えない怪物は、日本企業の対中ビジネスにとって常に厄介な存在である。
破壊、略奪行為を容認
「法治国家でない」というリスク
反日デモの件とも関連して、日本企業にとってのもう1つのチャイナリスクはすなわち「中国が法治国家でないことのリスク」である。
中国に進出している日本企業なら、日頃所在地の地方政府や地方幹部の法を無視した横暴や従業員たちの法的意識の薄さに悩まされている経験も少なくないだろう。今回の反日デモでは、警察の目の前で日系企業の商業施設や工場に対する破壊や略奪が堂々と行われたのは周知の事実である。普通の法治国家ならば信じられないような光景が中国では目の前の現実となっていた。
中国の法的秩序を維持して内外の企業や人民の安全を守る義務を有する中国政府は、その時には事実上自らの義務を完全放棄して違法的破壊行為や略奪を容認していた。つまりこの国は、場合によっては完全な無法地帯と化してしまうこともあり得るのである。