しかも反日デモ収束後、莫大な損害を被った日本企業に対し、中国政府は責任を取って賠償するつもりはまったくない。それどころか、お詫びの一言すら発していない。「全ての責任は日本政府にある」と当の中国政府が言っている程だ。この国はまったく、世界の基準から大きく外れた「無法国家」なのである。
このようなとんでもない「無法国家」に、日本の企業が安心して根をおろしてビジネスができるのか、まったくの疑問なのである。
インドでは見られない「3つのリスク」
以上のように、日本企業の直面するチャイナリスクを、「日中関係のリスク」、「反日感情のリスク」、そして「法治国家でないことのリスク」という3つの側面から捉えてみたが、考えてみれば、それらのリスクはことごとく、日本企業の対中国ビジネスだけが抱えるような独特なリスクなのである。
同じアジアでも、たとえば日本企業の対インドビジネスの場合、インドと日本との間では領土問題も歴史問題も存在しないから、まず「日印関係のリスク」はない。そしてインド人には「反日感情」があるとはあまり聞かないので、このリスクも心配ないであろう。民主主義国家のインドは、中国と比べればきちんとした法治国家でもある。もちろん、インドにはインドならではのリスクがあると思われるが、上述の「3つのリスク」を心配する必要はほとんどない。だが、対中国ビジネスとなると、それらを全部、抱え込むことになるのである。
それでも日本の企業は今後、競って中国への進出を図りたいと思っているのだろうか。もしそうであれば、摩訶不思議に思うばかりである。
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