2024年11月22日(金)

Washington Files

2021年4月19日

「チャイナカード」の“有効性”

 米議会で先月、新疆ウイグル自治区における人権弾圧を理由として「2022年北京冬季五輪開催地変更」を求める決議案が上下両院に提出されたが、その際、対中強硬派の共和党議員が中心的役割を果たしたのも、対中ライバル意識を反映したものだ。

 バイデン政権にとっての「チャイナカード」の“有効性”については、すでに昨年、バイデン氏側近のタルン・チャーブラTarun Chhabra氏(現ホワイトハウス国家安全保障会議上級局長)らが共同執筆した「Foreign Affairs」誌論文中で詳述されている。チャーブラ氏はオバマ政権下で国家安全保障会議「戦略立案局長」を務めた後、昨年までブルッキングズ研究所「国際秩序・戦略」部長として論陣を張ってきた。

 同誌論文のハイライトは以下の通りだ:

 「中国の貿易慣行はアメリカから何百万人もの仕事を奪い、その経済成長は、アメリカの安全保障と繁栄の基幹をなす国際システムに大きな支障を招来させてきた。米中両国の競争は今や避けがたいものとなっている。中国は台頭するにつれ、各国および国際機関への影響行使を目的とした、貿易からサイバー・秘密工作にいたるあらゆる分野においてアメリカ相手に激烈な競争を挑んできた」

 「米国内の政治的右翼は、トランプ前政権が対中競争の観点から貿易戦争を仕掛け、インド太平洋における脅威に対抗するための国防予算増額に踏み切るなど、中国とのライバル意識を強めつつあった。その一方、左翼は従来から、対外的な過度の競争が排外主義を醸造し、愛国主義を煽ることで戦争を引き起こしかねないとの強い懸念を抱いてきた。そして大国間競争の結果として、産軍複合体を肥大化させ、ひいては国防、情報機関、外交キャリアたちの権力集中を招くことを心配してきた。彼らは、何十年にもわたるアフガン、イラク戦争などの長期化による厭戦気分を募らせ、国内再建への資源投入を強く呼びかけている」

 「しかし、左翼が中国の脅威認識に二の足を踏むことはそれ自体、中国のアジア地域での侵略行為、略奪的国家経済体制、人権抑圧政策を勇気づけることにつながる。彼らが現実直視を回避することは、われわれの機会を失わせる。逆に、中国に断固として対抗することは、アメリカの繁栄維持、安全保障強化、自由主義体制の価値観再生を可能とするのみならず、棄損した国内政治修復にも役立つ。左翼はこの際、かねてから抱いてきた地政学的競争に対する嫌悪感を一掃し、国内における多くの業績が外国からの脅威に対抗した結果であることを認識すべきだ」

 「わがアメリカ国民はこれまで、外国の敵と戦う際には国内的意見対立を克服し、共通の善のために犠牲を払う用意を示してきた。戦争あるいは地政学的競争が激化する際に、連邦政府は増税に踏み切り、経済的規制を強化し、科学、インフラ、社会サービス支出を増額し、取り残された人々、グループのための機会を増やし、富の格差縮小に乗り出した。第二次大戦中には、連邦予算は1938年の68億ドルから1945年には一気に983億ドルに増加、高所得者層を対象とした所得税も94%にまで引き上げられた。この結果、経済格差は米国近代史上最も顕著に是正され、その後の冷戦を通じ、全米ハイウェー網の構築、ソ連との技術競争に対抗するための公共教育、科学・技術支出増額にもつながった」


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