専制主義的中国国家との競争に打ち勝つ
「そして今や、中国との競争が大規模公共投資を実現させ(左翼が求める)進歩的課題の前進を可能とさせる時代が到来した。この点では、これまで共和党もあらゆる政策分野に対する大型連邦支出に異を唱えてきたが、中国への対抗を目的とした諸計画に関する限りは超党派的アプローチの機会を提供することになる。
改革を『対中競争』を前提に組み立てることにより、進歩的プロジェクトも穏健派そして保守派に支持を拡大させることが可能となる。例えば2019年、中国産業・貿易政策に対する警戒心の高まりにより、レーガン革命当時のような経済保守主義に対する再考を共和党議員たちにも促しており、そのうちの一人、マルコ・ルビオ上院議員は『もはや市場原理主義では中国との競争に対処できない』として、21世紀型のいわば“共通善資本主義common-good capitalism”ともいうべき産業政策の推進を提唱している」
「同様に中国との技術競争においても、高等教育予算削減や、わが国人材確保の貴重な資源である移民制限を主張してきた保守派に対し、主張の転換を余儀なくさせている。その他、バイオテク、ITなどの先端分野もしかりだ……わが国は気候変動、伝染病拡散防止などの分野における中国民間レベルとの協力関係を進める一方で、専制主義的中国国家との競争に打ち勝つために、“中国カード”を効果的に駆使していくべきである」
このように、チャープラ氏らは、内政重視の民主党リベラル派に対しては、「中国との競争」こそが米国内の社会投資増大ひいては米国の国力強化につながることを説明する一方、財源確保のための法人税などの引き上げに根強い反対を唱える共和党タカ派向けには、中国への強硬姿勢をアピールすることで支持取り付けの重要性を訴える、いわば“両面作戦”の切り札としての「チャイナ・カード」の利点を強調したものだ。
バイデン大統領が今回打ち出した「インフラ投資」大計画は、再びホワイトハウス入り後、実際に戦略立案に携わるチャープラ氏の従来の主張を反映させていることは確かだ。今後、同政権としてはこうした視点に立った上で、中国との対抗意識をできるだけ前面に打ち出し、インフラ整備・新規投資のための大規模予算支出に対する国民の理解を求めていくとみられる。
ただ、それによって、トランプ前政権時代に増加しつつあった財政赤字のさらなる拡大は避けられず、今年後半にかけ、財源確保のための法人税および高所得者向け所得税引上げ案をめぐり、減税重視の野党共和党との激しい攻防が注目される。
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