2024年12月7日(土)

Wedge REPORT

2012年10月22日

 これに対し日本が国際世論を味方に付けるには、国連の場だけでなく米国やオーストラリア、ASEAN(東南アジア諸国連合)など価値観と利害を共有できる国々に対し、政府間だけでなく、相手国世論の形成にもあわせて働きかけていく精力的な国際広報活動が是が非でも必要である。

 このためには、新たに総理官邸が直接統括する「対外広報庁」の設置などが早急に求められる。当面は40億円規模の予算(今年度の対中ODA予算と同額)で運営できるものでもよい。すぐに具体化することだ。

 それはまた、尖閣問題以外にも「従軍慰安婦」などの歴史問題に対する日本の見解についての広報や、日本の市場アクセス、さらには巨大プロジェクト、高速鉄道といったインフラ輸出などの経済外交にも活用できる。

 しかし次の段階として、中国の公船や漁船が何十隻と大挙して尖閣諸島に上陸してくる事態になれば、軍事力の対峙、「一触即発」の状況も考慮される。いよいよこうした状況になれば同盟国である米国の動向がカギを握ることは言うまでもない。そのためにも、日米は今から大きな対中戦略の頻繁なすり合わせや基地問題の早急な解決に取り組み、米国との関係を緊密にしておかなければならない。

 さらに急がれるのは、まず従来の憲法解釈を改め、集団的自衛権を行使できるようにし、同盟国として対等な責任を果たす意思を今すぐにでも示すことだ。こうした内容を米国とともに共同声明として表明できれば、日米同盟の抑止力の画期的な向上を、中国をはじめとする国際社会にアピールできる。

 オバマ大統領も昨年11月にアジア太平洋地域を米国の世界戦略の最重点地域と位置付けることを宣言したが、これは日本の集団的自衛権行使を前提にした新戦略だ。南シナ海やマラッカ海峡などのシーレーンを守るべきASEAN諸国は海軍力が弱く、日米が同海域で海軍や海上自衛隊による共同軍事演習を行うことが中国への牽制、抑止になり、中国を現状秩序の維持へと向かわせることにつながる。

 中国の強硬姿勢がさらに激化し、武力衝突に至る可能性もゼロではない。中国は実際に南シナ海でも武力行使をくり返しながら海洋進出してきた。また、それに向けた布石ともいえる法律(「領海法」や「離島防衛法」など)を制定している。

 法律といえば、ここまで事態が切迫してきた以上、中国が2010年7月に施行した「国防動員法」にも改めて注意を向けておく必要がある。この法律は、中国が有事の際(あるいは緊急時でも)、中国国内で事業を営む外国企業は資産や業務、技術を中国政府に提供しなければならないと規定している。もし万が一、日中がこれ以上、緊張を高める事態となれば、中国に進出している日本企業は、製品やサービスを中国政府や中国軍に提供しなければならないと定められているのだ。


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