2022年7月6日(水)

Wedge REPORT

2021年7月5日

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イノベーションに必要な「人の密度」

藤田 イノベーションとは、要するに化学反応のことです。人と人が集まって、高密度(ハイ・デンシティ)な集団ができて、そこでぶつかり合うことで違うものが生まれる。

 アメリカの大学では、「イノベーション・ゾーン」を意図的に設けています。例えば、新しく建てられている研究棟には専攻に関係なく電気工学、医学、バイオロジー、哲学、マーケティング、化学や物理学の専門家を意図的に共生させています。色々な考えを持った人が集い、ここで混じり合うことで、デンシティが増した所に新しいアイデアが出てくる。

各務 クリーブランドでも、ドイツ系はじめ外国から移住してきた方々が多いように、アメリカでは多次元でものを考える素地があると思います。だから日本のような同質性に基づく、暗黙知の中の予定調和的なことは少なく、異質なる質問が生まれる。

―― テクノロジーが進化していくなかで、経営陣による「技術」への理解の必要性が高まっていますが、今でも日本では文系の経営者が多いです。

各務 技術者が経営を行う、藤田さんがまさにその人です。一方で東大では、テクノロジーチャンピオンが少なくありません。テクノロジーチャンピョンはビジネスのことが分からないという面もありますが、顧客やマーケットとキャッチボールをすることが不得意です。これによって、顧客の声に耳を傾けて、PDCAをちゃんと回してくということができれば、イノベーションに徐々に近づくことができるのですが、これがサイエンス型のディープテックではなかなか難しい。それがないためにイノベーションとして結実しません。

 アメリカにある大学では技術移転機関であるテック・トランスファー・オフィス(日本でいうTLO)もよりビジネス志向できる人材を擁しており、大学のテクノロジーがビジネスのにおいをしはじめるとVCがつくようになる。このあたりが日本の大学はまだ途上にあると思います。

藤田 アメリカにおける大学からの技術移転ですが、関係部門に技術が分かる実業家が少なく、弁護士が多すぎるという問題もあります。弁護士は技術のクリエイターではなく、その技術案件に関わる利害関係者の約束事をまとめていく法律専門家です。だから、技術移転を推進するには、もっと技術がわかる実業家を増やすことが必要です。また、企業と大学で、時間軸を合わせる(違うことを前提にして)ことも大事です。ですので、この時間軸のズレの間にベンチャー企業を入れると有効なのかもしれません。

 技術経営に話を戻すと、技術者は、頭のなかにコンパスを持っていると思います。例えば、新しいテクノロジーに接したときに、どのくらいの時間で実用化できるのか? という「時間軸」、そして、他の分野にどのくらいのインパクトがあるのか? という「空間軸」、この2つの軸で「新技術」について考えることができると思います。このコンパスが、イノベーションを起こすために非常に重要になってきます。もちろん、理系が全てではないですが。

各務 まったくその通りだと思います。オポチュニティウィンド(事業創出のタイミングの猶予期間)と言いますが、ある特定のテクノロジーがイノベーションとして大きく花を開かせるためには時空間の概念は非常に重要です。ある技術や大学研究成果が、事業化には時期尚早という場合もあります。将来イノベーションとして大きく花を開かせるためには、当該の「新技術」の基礎研究を積み上げる必要がある場合もあります。

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