ピンチは必ずチャンスにできる
―― コロナ後に求められる起業家精神とはどのようなものでしょうか?
藤田 歴史を振り返れば、「危機」は視点を変えれば「機会・チャンス」であることが証明されています。私が理事を務めるクリーブランドクリニックでは、初診はオンライン診察がほとんどとなりました。コロナ禍で無理矢理強制されてしまったことですが、効率はよくなりました。
今後も、このようなオンライン化は増えていくでしょう。それでも、同時に人間と人間が対面しないとなしえないことがある。例えば、仕事で1年間毎週オンラインで会って、大変親近感をもっていたニューヨーク在住の方と、先日、リアルで対面しました。実際に対面すると、身長が本当に高かくて驚かされました。ズームではどれくらい高いのかわかりません。
オンラインとオフライン、どちらかに流されるのではなく、異なる価値観を提供していくことが大事だと思います。
各務 新型コロナ禍にあって、岩盤規制をいわれてなかなかこれまで変革できなかったものが、いわば強制的に変化を余儀なくされることも出てきました。スタートアップの視点に立てば、まさに、藤田さんがおっしゃるように、社会が大きく変容するなかでチャンスが生まれます。在宅勤務やオンライン会議で、大企業の生産性の問題があぶり出される、働き方改革もあいまって副業、兼業が認められるようになると、大企業の優秀な人材がスタートアップ企業の成長を助ける人材として転職するというモビリティーが一気に増すでしょう。
東大を卒業して大企業に就職した卒業生に卒業から10年後話を聞くと、「大きな成功体験はないが会社に居残る」、つまり「喜びはないけれども、給料がいいから続けている」という答えが返ってくることが少なくありません。これは、精神衛生上、健康とは言えないでしょう。
自分の小さな不満に目をつむることなく、もう一度チャレンジする。そんな機会を作ろうと、卒業生を対象に「FoundX」というプログラムを立ち上げました。ここに卒業生が集まり、新しい事業を生み出すことができる「場」にすることが狙いです。
実は、「高齢社会」にも同じことが言えます。課題があるほど、オポチュニティがあるということです。IMDの日本の国際競争力が世界34位まで落ち込んでいるのもチャンスと見ることができるかもしれません。75年前、焼野原と落ちた日本ですが、そこから井深大さん、盛田昭夫さんという異質な人が出会い1946年東京通信工業、ソニーが生まれたのと同じく、今それに匹敵するような大きな変化の中で、行動変容こそが新しいものを生み出していくのです。
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