ホテル全体で仕入れ先を統一しているため、社食で使う食材も、レストランと同じ経由で仕入れられる。業者とのパイプを武器に、レストランで出しているのに比べても遜色ない食材を廉価で仕入れられるのが強みだ。「サンマだって、近所のスーパーでは買えないぐらい大きいのを出しているんだけどなぁ」。そうつぶやく尾田さん。とはいえ、諦めているわけではない。
「レストランと違って社食だから、やっぱりお客である社員との距離は近い。カウンターで、『今日は北海道のサンマだよ』『ノルウェーの鯖! 脂がのってるよ!』と声をかけるようにしています。そう言うと、少し手を出しやすくなるんじゃないかな」
実際に試食したサーモンは、大ぶりの身がふっくらと焼き上がっていた。レストランのメニューのような品の良さがあるが、同時に家庭で食べるような温もりも感じる。このおいしさをわかってもらうために、尾田さんの挑戦は続く。
安全と安心の上に成り立つ「おもてなし」
ホテルという接客業にある社食ならではの注意点がある。それは衛生管理だ。社食に何か問題があった場合、従業員が困るのはもちろん、営業に支障が出てしまう。そのため、「TT管理(Time & Temperature管理/加熱料理の加減を時間と温度でデータ化し管理する方法)」のノウハウに乗っ取って調理を進めている。
魚の場合、焼き上げた素材のうち一番肉厚なものに芯温計を差して中の温度が65度以上になっていれば合格だ。このほかにも雑菌の消毒方法などにマニュアルがあり、社食のスタッフは全員が熟知している。
「味にも盛りつけにももちろん気を遣うけれど、一番はやっぱり衛生管理」
一流のおもてなしは安全と安心があってこそ成り立つもの。恐らく、社食を食べるスタッフたち全員に共通する思いだろう。
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