2024年12月11日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年12月4日

 米AEI 研究員のマッケンジー・イーグレン(Mackenzie Eaglen)が、10月24日付でAEIのウェブサイトに掲載された論説で、大統領選の第3回目の討論会でのやりとりを引き合いに、米海軍のプレゼンス維持には、能力だけでなく艦船数が重要であると論じています。

 すなわち、討論会において、オバマ大統領は、今日の海軍においては艦船の数よりも戦闘能力の方が重要であるとし、艦船の数にこだわるロムニーは時代遅れであると一蹴した。これはブッシュ(子)政権でラムズフェルド国防長官が広めた考えである。海軍首脳も、ここ何年にもわたり、数よりも戦闘能力が重要であると主張している。

 しかし、軍隊の役割は、戦いに勝つことだけではない。日ごろから、敵を抑止し、友邦・同盟国を支援し、国際的事件に対応し、国全体のソフト・パワー外交を支えることも役割である。

 海軍の艦船は、世界の海洋を巡航し、寄港や共同演習を行い、米国の軍事的関与やプレゼンスを示すことにより平和と安定を維持できるのである。オバマ大統領はこの側面を見逃している。米海軍の火力や殺傷能力が高まっているとしても、数は必要である。

 米海軍は戦闘に勝つ能力は持っている。しかし、戦って勝つよりも、戦わずして勝つことが最善である。その為には抑止が必要である。抑止の為にはプレゼンスの維持が必要であり、数が必要なのである。オバマ大統領はこの点を見失っている、と論じています。

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 イーグレン女史は、米国の安全保障について、予算や装備といった観点からの緻密な分析を得意とする専門家で、「財政の崖」が到来しても国防費を削減すべきではない、との議論を一貫して展開している人物です。この論説も、その流れに沿うものです。論説は、大統領選前に書かれたものですが、海軍のプレゼンスが持つ意義と、なぜ能力だけでなく数量も重要であるのかを、平易かつ適切に指摘しており、当然、今でも当てはまる議論です。


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