2022年10月6日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年12月7日

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 ただ、ハーディが言及していない、スービック基地が閉鎖に追い込まれた経緯については、注釈が必要でしょう。1990年から91年にかけてのスービック基地使用期限延長交渉は、米比同盟関係に動揺を与え、その最中に起きたピナトゥボ火山大噴火が大きなきっかけとなり、その後の、フィリピン上院によるスービック基地使用期限10年延長案の拒否という事態に至っています。1991年11月の米海軍スービック基地撤退は、当時反米感情が強かった、逆に言えば、親中傾向のあったフィリピン政界の強い意向を反映したものでもあります。その意味で、フィリピンは、自らの意志で米海軍を去らせたことになります。

 スービック基地使用期限延長拒否は、20世紀フィリピン外交の最大の失敗であり、そのツケは現在まで続いていると言えます。1992年以降の南シナ海における中国のプレゼンス拡大は、当時の米比政府の決定の結果と考えてよいでしょう。

 当時、米海軍は、横須賀と佐世保があるからスービックなしでも南シナ海を十分守ることができる、と考えたのかもしれませんが、そうだとすれば、それは、大きな判断ミスと言うべきです。この教訓は、沖縄の海兵隊にも言えることです。如何に兵器が高性能となり、輸送手段が向上しても、その場所に「存在すること」の重要性は何物にも代え難いものです。特に、その場所が戦略的要衝であれば、尚更です。

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