オトナの教養 週末の一冊

2012年12月21日

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東嶋和子 (とうじま・わこ)

科学ジャーナリスト・筑波大学非常勤講師

元読売新聞科学部記者。フリーランスで環境・エネルギー、医療、生命科学、科学技術分野を中心に、科学と社会のかかわりを取材。主著に『名医が答える「55歳からの健康力」』(文藝春秋)、『人体再生に挑む』(講談社)など。新著に『水も過ぎれば毒になる 新・養生訓』(文春文庫)

 <ある男子生徒の家族は、打ち捨てられたトレーラーに住み、暖房もなければ、湯も出ないたいへん貧しい暮らしを強いられていた。そこでこの生徒は、一九六七年型のポンティアックのラジエーターと六十九個のソーダの空き缶、そのほか町でかき集めたガラクタを使って太陽エネルギーを利用した暖房器具を作りあげた。また、ある女子生徒は、自閉症を患った従妹のために、読み書きを学んだり他人と交流できるようになる治療プログラムを考案して成果をあげ、国じゅうの学校で採用されるにいたった。>

 こうして著者は、インテルISEFの会場で5日間、生徒たちが研究発表をし、審査員からの質問に当意即妙に答え、授賞式で固唾を飲むさまを見守った。1502人の参加者から「特に心を動かされた」生徒たちと会い、6つの章を書いた。他の章では、過去のサイエンス・フェアで伝説的存在になっている受賞者らについても追っている。

少年少女の好奇心の芽を伸ばした大人たち

 本書の、そしてサイエンス・フェアの主人公は、いうまでもなく研究発表者である少年少女たちなのであるが、私はむしろ、彼らを信じて、それぞれのやり方で好奇心の芽を伸ばしてやった大人たちの物語として興味深く読んだ。

 「第二のビル・ゲイツ」と賞賛される、サイエンス・フェア常連の少年の成功譚では、母親が「孟母三遷」のように少年の才能を伸ばす場所を探し求め、結局、自宅の農場で「やりたいことをやる」という自宅学習の道を見出す。

 学校やコミュニティで奇人変人扱いされる子や危険人物としてにらまれる子、少年院にいる問題児でも、研究の場では専門家と肩を並べ、一人前の仲間として扱われる。こうした大人たちの態度こそ、教育というものではないかと感じた。

 本書を読むと、「科学オタク」あるいは「理系の子」はアメリカでも決して、チアリーダーやアメフト部のキャプテンのような人気者ではない。どちらかといえば「ダサい」と敬遠されがちなキャラクターで、私は、アメリカの人気ドラマ「glee」を思いおこした。

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