シェニエール社のアンドリュー・ウェアさんはそう指摘する。
日本企業も手をこまぬいて見ているわけではない。
12年7月、中部電力と大阪ガスは、テキサス州でLNG受け入れ施設を保有・運営するフリーポート社の子会社(以下、フリーポート社)と、天然ガスの液化加工契約を締結した。2社はアメリカで直接天然ガスを購入して、フリーポート社が建設予定の液化設備を使用して、年440万トンのLNGをアメリカから輸出することが可能になる。
2基の液化天然ガス(LNG)タンクの前に立つ、フリーポート社のゼデニック・ゲリックさん(左)とロバート・ペイトさん(右)
12月5日には非FTA国への輸出の許可権限を持つ米エネルギー省(DOE)が、
「いかなる仮定においても、LNG輸出はアメリカ経済にとってプラスである」
と結論付ける報告書を発表した。
日本では期待が高まるが、取材したアメリカの有識者や関係者の意見を集約すると、DOEに申請されている15件以上の輸出計画について、
「実際に許可されるのは3~4件ぐらいだろう」
という意見が多かった。しかも、仮に許可が出たとしても、LNGターミナルの稼働までには数年はかかる。フリーポート社の計画でも商用稼働は17年9月と5年後の話だ。
原発が停止して緊急に火力発電用のLNGが必要になった日本にとって、安価なアメリカ産ガスの輸出許可が、すぐに貿易赤字削減に役立つわけではなさそうだ。だが、新たな輸入先の確保は、カタールやマレーシアなど既存の輸出国に対する価格交渉力を高めることにつながるだろう。
復権するアメリカに
日本はどう対するのか
日本では安いLNGを買うということが「シェール革命」の焦点としてみなされている傾向が強いが、アメリカにとってLNG輸出は、新たに手にした外交カードの1つに過ぎない。