7月に行われた決選投票で大統領に選ばれカスティージョの政権が迷走することは、当初から予見されていたことであるが、その通りの状況となっている。
「自由ペルー」という極左共産主義政党が与党であることから、閣僚には過去にテログループのセンデロ・ルミノソに共鳴したような人物も登用され、元ゲリラのベジャール外相は、政権発足後3週間もたたないうちにその過激な発言により辞任した。ベリド首相も当初からその経歴や過激な言動からその適格性に疑問が投じられていた。
「自由ペルー」の創設者ウラジミール・セロンは、田舎教師で教員組合の委員長としてストライキを指導した程度の政治経験しかないカスティージョを自分の操り人形にできると思っていただろうが、カスティージョといえども、このまま自由ペルー党の路線を維持すれば議会で弾劾されてしまうことは理解できる。
カスティージョは、10月6日、ついに内閣改造を行い、ベリド首相やマラビ労働相など大統領よりもセロンに忠誠を誓っていた強硬派の閣僚たちを追い出して、ようやく主導権を取り戻した。これで大統領が強引に議会を解散し憲法改正を目指すという最悪の筋書きは遠のいたと言える。ただし、カスティージョの当選を予想していなかったセロンは、この際大統領を失脚させて混乱を招くことを狙っているとの見方もあり、油断はできない。
新内閣発足後1カ月内に、首相は自らの信任決議を議会に求めねばならず、これが超えるべき当面の山である。10月14日にセロンは、「自由ペルー」は新首相を信任せず、党員で留任したブルアルテ副大統領兼開発相と新任のチャベス労働相を党から追放するとツイートした。
しかし、「自由ペルー」の議員の半数近くはカスティージョを支持するとも見られており、他の左派政党と中道諸党議員が全員賛成すれば、信任拒否のフジモリ派など右派3政党と「自由ペルー」のセロン派をわずかに上回る計算になるが、そうなるかは極めて微妙である。