世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2021年8月25日

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 キューバでの抗議活動やハイチでの大統領暗殺を受けた政情の極度の不安定の問題で、ラテンアメリカ外交がバイデン政権にとっての難題として俄かに注目される状況になって来た。そして直近の米国の対応にはやや首をひねるものがある。

 7月26日、ブリンケン国務長官は、抑圧されたキューバ人を支援するために世界の民主主義国が一丸となっていることを示すとして声明を発表した。しかし、署名したのは米国以外に20か国に過ぎず、域内国はブラジル、コロンビアなど5か国だけで、他にはイスラエル、バルト3国、クロアチア、サイプラス、ウクライナ、コソボ、北マケドニア、モンテネグロといった国々が含まれており、スペインを始めとするEU主要国、英国、カナダ、豪州、日本などが含まれていないことがむしろ注目される。

 更に、28日に予定されたキューバの状況を議論するための米州機構(OAS)常任理事会は、カリブ諸国等が会議の招集について協議を受けなかったとして欠席し無期限延期となった。

 これらには、国務省の根回し不足或いは拙速な対応が窺われる。西半球担当の国務次官として指名されたB. ニコルズについて未だに上院の承認の目途は立っておらず、ブラジル大使、メキシコ大使も同様であるが、実は、これはラテンアメリカ関係に限ったことではない。

 報道によれば、国務省の60余りの人事承認手続きが、ノルドストリーム2に反対するテッド・クルーズ共和党上院議員が制裁措置を要求してすべての国務省人事の承認をストップしているためだという。これに他の共和党上院議員も同調しているようであり、これはこれで、米国の民主主義の機能不全を象徴する異常事態である。

 加えて、上院外交委員長のメネンデスは、民主党であるがキューバ系で対キューバ強硬派として知られており、共和党の実力者でやはりキューバ系のルビオ上院議員と共にバイデン政権に対しては、キューバやベネズエラに対する強硬措置を要求する点では一致している。特に、キューバ政権の黒人系キューバ人に対する差別を問題としており、バイデン政権としても上院との関係でキューバに対する具体的な措置を取ることを焦ったのではないかとも思われる。

 他方、6月23日、国連総会は、米国の対キューバ禁輸措置の撤廃を求める総会決議を184対2により29年連続で可決しており、キューバ問題に関する国際社会での米国の孤立感は否めない。

 増加する移民をめぐる国内対立に加え、ハイチやキューバの混乱が深刻化すれば、新たな難民問題が生じかねない。ペルーで成立したカスチィージョ政権はボリビア並みの反米政権となる可能性が高く、秋には、チリでも左派政権の発足が予想され、来年には、コロンビア、ブラジルでの左派への政権交代の可能性もあるなかで、米国のラテンアメリカ外交は極めて難しい状況に陥りつつある。

 キューバに対する強硬策に固執する上院、中間選挙対策、地域の政権の左傾化、そして、移民政策をめぐる国内の分断の中でバイデン政権の価値観外交は益々制約されることになろう。このような状況の中で、パンデミック対策、特にワクチン支援外交は、この地域に米国のプレゼンスを再度認識させる効果はあると見られ、米国としても特に力を入れるべきであろう。

  
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