1300年以上前の飛鳥時代からほぼ20年に一度執り行われてきた伊勢神宮の式年遷宮。その第62回式年遷宮がいよいよ平成25年秋に行なわれる。このほど『伊勢神宮 常若(とこわか)の聖地』を刊行した著者・千種清美(ちくさ・きよみ)氏に、取材を通して見た伊勢神宮の魅力やそこにかかわる人々、今と昔、そしてこれからについて伺った。
――伊勢の地からテレビや著書で情報発信を続けている千種さんにとって、伊勢神宮(以下、神宮)とはどんな存在・場所なのでしょうか。
千種清美氏(以下、千種氏):まず伊勢神宮に月にどのくらい行っているだろう、と改めて考えてみましたら、打ち合わせや取材、ご案内を含めると月の半分にもなります。神宮は“聖地”といわれる特別な場所でありながら、いつでも誰にでも開かれた場所で、何となく訪れてもいいし、何か自身に切実なものを抱えているときでも、私自身何か迷ったときには自然とお参りに行きます。
――千種さんは、前回の式年遷宮(平成5年)前後から神宮や伊勢の取材をされていますが、どのようなことを感じていますか。
千種氏:私が神宮に通うようになったのは、地元の出版社に入社した平成3年からです。前回の式年遷宮の立柱祭(りっちゅうさい)、上棟祭(じょうとうさい)の取材に行きました。その頃から内宮前が大きく変わってきて話題に事欠かない場所になってきました。平成5年に「おかげ横丁」ができて、江戸時代のお伊勢参りの絵図に見るような、また戦前あったような町の賑わいが戻ったように感じました。
――本書は年間千数百回以上のお祭りや神宮の春夏秋冬、その悠久の歴史などが、明快かつ平易に、そして生き生きとした語り口で描かれているのが魅力です。深遠な聖地のことを読者に伝えるときに心がけていることなどはありますか。
千種氏:井上ひさしさんの言葉に「難しいことを易しく、易しいことを深く、深いことを面白く」というのがあります。私もそのように皆さんに伝えられるように表現したいと思っています。自分が感じたことをありのままに書くようにして、写真もたくさん撮っていますが、自分が見たままに表現できるように心がけています。