2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2021年11月17日

 米欧は10月31日、鉄鋼とアルミに課した関税を撤廃する声明を発表した。米欧の鉄鋼とアルミの関税をめぐる貿易戦争を一段落させたわけで、歓迎すべきことである。

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 トランプ大統領は2018年、通商拡大法232条に基づき、カナダとメキシコ以外からの鉄鋼の輸入に25%の、そしてアルミに10%の関税を課していた。同法は国家安全保障の見地から関税を課すことを認めているが、鉄鋼とアルミの輸入が米国にとり安全保障上の脅威だったとは思われない。むしろ、トランプがやったことは、自らの国内経済成長戦略を傷つけ、EUがハーレーダビッドソンのオートバイからケンタッキー・バーボンに至る米国製品に報復関税をかける結果を招いた。

 今回の合意でバイデン政権は、新型コロナウイルス以前とほぼ同じ水準の鉄鋼とアルミの輸入に対し、通商拡大法232条の関税を免除することとした。ただし、バイデン政権はトランプの関税のすべてを廃止するわけではない。

 米国の新型コロナ後の鉄鋼の需要が、関税が免除される440万メトリックトンを超えれば、通商拡大法232条の関税がかかる。また、未加工のアルミが1万8000メトリックトン、半加工したアルミが36万6000メトリックトンを超えると関税が課せられる。しかし、こうしたことは常識の範囲内であり、今回の合意の価値を下げるものではない。

 今回の米欧の話し合いで注目されるのは、鉄鋼とアルミの生産の炭素強度に言及していることである。炭素強度とは二酸化炭素(CO2)排出量を一次エネルギー総供給量で割った値で、炭素強度が高いと排出される二酸化炭素量が多いことを意味する。炭素強度を考慮することは気候変動が強く意識されていることを示すものである。


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