米欧は今回、鉄鋼とアルミの生産の炭素強度を考慮に入れつつ、貿易の今後の取り決めを議論することを約束した。これは、まさに中国をターゲットとしたものと言ってよい。
中国はどう動くのか
ウォールストリート・ジャーナルの11月1日付け社説‘A Biden Trade Win in Europe’は、今回の合意を歓迎しつつも、「炭素強度を考慮することは気候変動に執着することで、それはひどい保護主義の新しい口実となる危険がある」と言っている。しかし、それは言い過ぎだろう。
確かに保護主義の口実とされる危険がないわけではないが、気候変動は今や世界の重要な関心事であり、炭素強度に注目するのは自然なことである。鉄鋼とアルミの生産の炭素強度の議論で中国に照準が定められるのは当然である。
主要7カ国首脳会議(G7サミット)では、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする目標を掲げた。これに対し中国は30年までに排出を減少に転じさせ、60年に実質ゼロにする目標を掲げている。中国は二酸化炭素の排出量で世界の約3割を示すが、温暖化問題では自国を途上国と位置づけ、先進国並みの厳しい対策の実施を受け入れず、先進国から支援を要求している。
世界の気候変動問題の今後は、中国が一つのカギを握ると言えるだろう。