2024年7月16日(火)

Wedge OPINION

2021年11月26日

日銀にとっては
正常化プロセスの好機

 では、日本にできることはないのか。上述したように「新規感染者主義からの脱却」で経済正常化を図ることが大前提として、これを機にポーズであっても日銀の正常化姿勢は示した方がよいように思える。歴史的に日銀が緩和策の副作用を指摘されながらも正常化プロセスに触れなかった最大の理由は「円高が怖いから」だった。

 しかし、もはや日銀以外の海外主要中銀は正常化プロセスに関し、一歩も二歩も先行している。今さら、日銀が多少の緩和縮小を示唆したところで、かつてのようなヒステリックな円高になるとは思えない。

 また、近年ではドル/円相場と日経平均株価の相関も不安定になっており、円安に拘泥したところで株価浮揚の効果も過去ほどではない。いつかはやらねばならない出口戦略なら今が好機という考え方もある。

 重要なことは、政策当局は焦燥感を金融市場に悟られてから動くと、大体ろくな目に遭わないということである。市場参加者から「円安は日本経済にとって痛手」と認識され、いったんその方向に相場が動き始めたら嵩(かさ)にかかって円売りで攻め込まれる恐れがある。そうなってからでは、できることは非常に限られてくる。

 金融政策に限らず、まだ傷の浅い今のうちに少しずつ円安を抑止できるような処方箋を検討すべきように思える。それくらい、円安と原油高が同時進行する状況は危ういものである。しかし、これを契機に円安万能論のような社会規範が修正されるとしたら不幸中の幸いと言えるだろう。

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■日常から国家まで 今日はあなたが狙われる
Part1 国民生活から国家までを揺さぶるサイバー空間の闇
山田敏弘(国際ジャーナリスト)
InterviEw1 コロナ感染と相似形 生活インフラを脅かすIoT攻撃
吉岡克成(横浜国立大学大学院環境情報研究院・先端科学高等研究院准教授)
coLumn1 企業を守る手段の一つ リスクに備える「サイバー保険」 編集部
Part2 主戦場となるサイバー空間 〝専守防衛〟では日本を守れない
大澤 淳(中曽根康弘世界平和研究所主任研究員)
Part3 モサド元高官からの警告 「脅威インテリジェンス」を持て
ハイム・トメル(元モサド・インテリジェンス部門トップ)
Part4 狙われる海底ケーブル 中国サイバー部隊はこう攻撃する
山崎文明(情報安全保障研究所首席研究員)
Part5 〝国家〟に狙われる日本企業 経営層の意識変革は待ったなし
川口貴久(東京海上ディーアールビジネスリスク本部主席研究員)
coLumn2 不足するサイバー人材 「総合力」で企業を守れ  編集部
InterviEw2 「公共空間化」するネット空間 国民を守るために必要な機関
中谷 昇(Zホールディングス常務執行役員GCTSO)
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Wedge 2021年12月号より
日常から国家まで 今日はあなたが狙われる
日常から国家まで 今日はあなたが狙われる

いまやすべての人間と国家が、サイバー攻撃の対象となっている。国境のないネット空間で、日々ハッカーたちが蠢き、さまざまな手で忍び寄る。その背後には誰がいるのか。彼らの狙いは何か。その影響はどこまで拡がるのか─。われわれが日々使うデバイスから、企業の情報・技術管理、そして国家の安全保障へ。すべてが繋がる便利な時代に、国を揺るがす脅威もまた、すべてに繋がっている。


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