2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2021年12月3日

 11月7日に行われたニカラグアの大統領選挙では、現職のオルテガが当選した。同国の選挙管理当局の発表では、投票率は65%、オルテガの得票率は76%だったとのことだが、この投票率には疑問が投げかけられている。現地の市民団体の推計には、投票率は2割に達していないとするものもあるようだ。

Niyazz / iStock / Getty Images Plus

 トランプ政権のボルトン安全保障担当補佐官は、既にニカラグアを「専制のトロイカ」の一角に含めていた(他の二国は、キューバとベネズエラ)。今回の選挙は、独裁国家化の完成を証明するものである。ラテンアメリカ全体が非民主化に向かう傾向の中で、この事態を放置すれば、域内指導者の独裁的傾向を更に強める可能性がある。

 ウォールストリート・ジャーナル紙の11月9日付け解説記事‘Nicaragua’s Shift Toward Dictatorship Is Part of a Latin American Backslide’は、チリを拠点とする世論調査会社によると、域内では、民主主義を支持する人々の割合が、2010年から20年にかけて減少し、昨年は初めて50%を下回った、と報じている。民主主義に対する満足度も、44%から25%に低下し、民主主義への不満は、20年には70%に達した。

 同社の世論調査では、半数以上の人が、自分たちの問題が解決されるのであれば、非民主的な政府が政権をとってもかまわないと答えている。同記事は、地域において、独裁政権は害悪だという20世紀の教訓が忘れられつつある、と指摘する。

 ニカラグアのケースは、民主的に選ばれた大統領が、親族縁者を要職に据え、軍・警察の実力組織を支配し、次に、司法権を支配し、野党や有力政治指導者を逮捕するなど事前に排除し、更に選挙管理システムを支配して茶番の見せかけの選挙を行い、その権力維持を正当化するという、独裁化の教科書のようなケースである。合わせて、報道の自由の弾圧やSNSの不法不当な活用、そして、国際的な選挙監視団の受け入れ拒否といった措置も取られた。


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