世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2021年11月10日

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 12月にバイデン米大統領は民主主義サミットを開催する予定だが、Foreign Policy誌(電子版)の10月19日付け解説記事‘Biden’s Summit for Democracy Will Include Some Not-So-Democratic Countries’は、同サミットにはあまり民主的ではない国も招かれる、と問題提起している。同記事は、Foreign Policy の独自取材に基づくもので、具体的には、ポーランド、メキシコ、フィリピンについて以下のように言及している。

AlexLMX / iStock / Getty Images Plus

・ポーランドは、与党が司法権に対する支配を強めようと意図して、何年も前から着実に民主主義から後退しており、EUとの衝突コースに入っている。

・メキシコのロペス・オブラドール大統領は、公然とメキシコの一党支配の時代に立ち返り、メキシコの民主主義の柱を損なっているのではないかという懸念を広く抱かせている。

・フィリピンのドゥテルテ大統領は、自国の司法を非難し中国の積極的な進出に妥協を重ねて来た。

 トランプ外交は、金正恩やプーチンに対し、あたかも権力者としての共感を示しながら、見るべき成果を上げなかった理念無き外交であった。これに対し、権威主義の台頭の中で米国がリーダーシップをとって民主主義の再生を世界共通の課題と位置付け、中国、ロシアに対抗していくという発想は、バイデン政権らしいイニシアティブといえる。しかし、理想と現実のギャップや具体的な成果につながる戦略が見えないことから、バイデン政権にとって移民政策に次ぐジレンマを抱え込むリスクも懸念される。

 ジレンマとは、民主主義の退潮は、米国自身の問題でもあり他国においても必ずしも中国・ロシアが原因とは言えず、他方、中国・ロシアに対抗していく上では、上記のような民主的とは言えない国の協力も必要な場合があり、民主主義の復活と中国・ロシアへの対抗が相乗効果を持つとは言えない面があることである。

 民主主義サミットに対する批判的意見には、民主的とは言えない国を招くことによりそのような政策を許容するお墨付きを与えてしまうのではないかとか、中国・ロシアに対する対抗という面が強調されれば中国側の切り崩しにより、十分な参加国が得られない恐れとか、民主主義を軸にした冷戦は経済的に困難だといった議論がある。そういう意味ではサミットを民主主義の確立したコアとなる少数の国だけで立ち上げ、次第に拡大するというアプローチもあったかもしれない。

 しかし、バイデンにとり時間が十分にある訳ではなく、また、直ぐに成果が上がることも期待はできない。従って、米国のリーダーシップを示す上で、イデオロギー的踏み絵を踏ませることなく、独裁的傾向の抑制、腐敗防止、人権尊重といった機能的な趣旨に総論で賛同する国の参加を広く認めるということも1つの選択であると考える。

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