2024年4月24日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2021年12月3日

 生温い対応を取るのであれば、エルサルバドル、ホンジュラス、更にはブラジルが後に続きかねず、国際社会、少なくとも民主主義国は、一致してニカラグアに圧力をかける必要がある。特に、米国にとっては、メキシコ国境にニカラグア人移民希望者が殺到する現実の問題も生ずる。

民主主義サミット見据えた措置も

 バイデン政権は、個別の指導者を対象としたスマート・サンクションの強化や経済制裁措置をとることになろうが、キューバやベネズエラの例を見ればその効果はほとんど期待できず、むしろ一般国民の生活に更なる困難を増すことが懸念される。

 独裁化の誘惑を他国の指導者に波及させないための1つの分かれ目は、米州機構(OAS)でニカラグア非難決議が採択できるか否かであると思われる。既に10月20日には、オルテガ政権が自由で公正な選挙を実施できなかった場合、必要に応じて更なる行動をとるとの決議が34か国中、賛成26、棄権7、欠席1(ニカラグア)で採択されていた。

 そして、11月12日には、今回の選挙には民主的な正当性がないとの決議が採択された。これにより、米州機構憲章及び同民主主義憲章に基づいて、外交的な取り組みから加盟資格の停止に至るまでの措置が取られることになるが、ニカラグアは決議に反発し、11月19日にOASを脱退する旨表明した。それでも、他の独裁化予備軍の国家にとって、決議は多少の抑止力にはなろう。

 12月の民主主義サミットを控え、米国としても何らかの効果ある措置をとる必要を当然感じているであろう。民主主義の価値観を共有する日本も外務報道官記者会見で選挙結果に疑義が提起されていることを認識し懸念を表明しているが、今後とも毅然とした対応をとる必要があろう。

   
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