うつ病蔓延時代への処方箋

2013年2月12日

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―― ITで世の中は便利になりましたが、より便利さを求めて仕事量が増えていく。際限のない状況です。IT革命には光と影があります。

渡部:私も経験があるのですが、昔の営業は顧客との雑談を重視していました。顔を見て世間話をすることでつながりを深めていました。電話で商談をしていると、上司に怒られたものです。現在はどうか。IT化で商談や用件はメールが増え、帰社後は訪問記録や商談内容、受注確率など詳細なデータのインプットと報告を求められる。顧客と接する中での仕事の楽しさ、やりがいを奪ってしまったと思えます。景気が悪いので人を増やさず、無駄を省くためにITを導入して経営革新と称して効率を高めることに必死に取り組んできました。余裕のない逃げ場のないシステムを構築したことが、人の気持ちを硬直化させてしまったようなものです。

 人は機械ではない。能力も対応力も個人差があり、誰にでもストレスにはキャパシティがあります。コミュニケーションの場が減り、ココロが折れやすい状態になっているところに、職場での人間関係や家庭での問題など、様々なストレス要因が加わることでうつを発症する人が増えてしまった。当然の成り行きだと思います。仕事に無駄が必要だと言えば受け入れられないでしょうが、無駄ではなく“糊しろ”は不可欠です。ゆとりを感じる部分を削ってしまった。これが社員を心理的に追い込むことにつながったと感じます。

米経営者に必携のうつ病知識

日本生産性本部メンタル・ヘルス研究所が2012年11月に実施した「メンタルヘルスの取り組み」に関する企業アンケート調査結果(218社)。これまで30歳代が多かったが 今回の調査では40歳代が最も多くなった。2割の企業では10~20歳代が最も多いとい う結果だった。
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―― 一般的に経営者タイプの人は、へこたれず、何事にも努力してきた強い人たちが多いと思います。だからメンタルで悩む社員は、わがままであり、なまけ者だと考えてしまいがちでした。最近は、職場うつに前向きに取り組む企業が増えており、経営者の意識が変わってきていると感じます。

渡部:最近の職場うつの傾向として言えるのは、うつが軽症化しているが広がっていることです。とくに若年層にその傾向がみられます。マスコミでうつ問題が取り上げられるようになり、気づきが早まったこともありますが、やはり若い層はメンタルクリニックに行くことに抵抗感がなく、そして行けばうつ病や適応障害、不安障害などと診断されるケースが多いことがあげられます。この職場でのうつの広がりをトップも気づかずに放置していれば、生産性とモチベーション、帰属意識は低下していくばかり。トップが目指していたことの逆にしかなりません。

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