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家電エコポイントはテレビの輸入も促したようだ。右のグラフからはエコポイント導入時点から急激に輸入比率が増大したことがわかる。こうした状況は、テレビを構成する技術の進歩と産業の競争構図を見れば、容易に想定できることである。
海外には十分な性能のテレビを安く供給するODM企業が存在する。テレビを構成する技術の多くは汎用化、標準化している。技術が汎用化し、生産が国際化した産業では、国内市場拡大の恩恵が、国内に留まることなく、海外に流出しやすい。
家電エコポイント事業では、環境省、経産省、総務省が、それぞれ異なる目的から事業を支持した。こうした「同床異夢」の政策は両刃の剣である。志をもち、うまく活用すれば、難しい政策を実現できる。しかし、異なる目的がお互いにもたれ合い、結果として、どれも成果が得られないということにもなりかねない。「同床異夢」には罠がある。
再エネ買取制度の高い買取も問題
この状況に、「エネルギー」や「環境」といったマジックワードの力が加わると、長期的な経済効果に関する冷静な考察がますますおろそかになる。環境対策やエネルギー対策を正面切って否定できる人は少ない。だから経済効果のはっきりしないエコポイントも、「エコ」という言葉をまとうことによって容易に実現されたのではないか。「震災復興」という言葉にもおそらく同じような力があるに違いない。
家電エコポイント事業によって国内市場は確かに活気づいた。しかしそこで問題となるのが「普及(国内市場拡大)=経済発展」という幻想である。技術進歩が鈍化し、技術が汎用化し、競争が国際化した産業では、特定国での市場拡大は、その国の経済に必ずしも十分な恩恵を与えない。当面は国内市場が活性化するし、少なくとも消費者は恩恵を受ける。しかし、企業が国際競争力をもち、多くの付加価値を生み出すようにならなければ、その効果は短期的なものに留まり、投入した税金に見合うだけの十分な見返りを得ることはできない。
同様の視点から筆者は、再生可能エネルギーの全量固定価格買取制度(FIT)における太陽光発電に対する42円/kWhという高い買取価格に反対してきた。家電エコポイント事業と同じ構図が見えたからだ。