2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年3月1日

 例えば、上院指名審議の過程で、ケリーは、アジア復帰政策について、対中包囲ではなく対中関係改善のためであると言ったり、東アジアにおける軍事力の強化についても、現在の水準以上の増強には反対の旨表明したりしています。これは、クリントンの元来の意図とは正反対です。

 今回のフィリピンの提訴は、国際法重視という観点で、尖閣問題にも参考になります。日本は、中国側が国際司法裁判所(ICJ)に提訴すれば、これに応じる用意があると、明確に宣言しておくべきでしょう。提訴すれば負けるでしょうから、中国側が提訴する可能性は、まずないと考えられますが、堂々と受けて立つことを宣言することによって、日本の道義的優位性を示して、米国が日本を支持し易くさせることになります。

 特に、オバマ政権の陣容が一新して、従来のように、この問題について中国に厳しい姿勢を示すかどうか分らなくなっている現状において、日本が道義的優位を持つことは、日本の今後の政策、すなわち、防衛費の増額、集団的自衛権の行使(中国はあらゆる影響力を行使して、米国内外で、これに反対する声を動員するでしょう)を、米国が支持する道義的立場を強化することになります。

 ところで、ICJ付託を認めることは、「現状ではなんらの問題なく日本領である尖閣について、係争を認めたことになる」という議論がありますが、中国がこの問題を提起している以上、国際的には係争は存在します。日本はその係争に、法的に、勝てばよいのです。

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