2009年7月に欧州委員会に提出されたブルガリアのエネルギー市場自由化に関するブルガリア政府のレポート(http://www.energy-regulators.EU/portal/page/portal/EER_HOME/EER_PUBLICATIONS/NATIONAL_REPORTS/National%20Reporting%202009/NR_En/E09_NR_Bulgaria-EN.pdf)では、自由化は成功裏に進捗しているとされていた。一方、2011年9月に欧州委員会は国内エネルギー市場について透明性が完全には確保されていないとしてブルガリア、エストニア、英国の3カ国に通知を出している。現時点では欧州委員会は次の2点をブルガリアの問題と指摘している。(1)ブルガリアの卸電力市場が寡占化されている(2)小規模需要家に対する規制料金を決定するエネルギー・水規制委員会の独立性に疑問あり。
電気料金高騰に対する国民の怒り
ブルガリアの平均賃金はEU27カ国中最低の月387ユーロだ。基礎年金額は76ユーロ、年金の平均額は150ユーロだ。2013年1月の電力料金は寒波の影響により高くなり、平均的な家庭の電気料金は100ユーロを超えると報道されている。ブルガリアの電気料金は2012年7月に再生可能エネルギーによる電力料金の負担のために13%上昇したが、それでも欧州最安値のレベルだ。
多くのブルガリア国民は電気料金の上昇の原因は電力供給を行っている海外の電力会社3社が棚ボタの利益を不当に上げているためと思い、街頭で抗議活動を行う事態となった。ブルガリア政府は海外電力会社との契約書を非公開としているが、15%の収益を保証しているとの報道もあり、国民は非公開であることに胡散臭さを感じている。また、規制委員会の委員長人事でも賄賂の噂があり、腐敗撲滅に消極的なボリソフ首相に対する怒りも背景にあると言われている。
極右政党は、電力の再国有化を主張し、電気料金の請求書を焼き捨てるように呼びかけたが、街頭の抗議行動では実際に請求書を焼き捨て、首相をマフィアと呼ぶ動きも出た。
事態収拾のために、17日にはエネルギー大臣が電力会社との契約書を公開すると述べ、18日には財務大臣が辞任し、同日電気料金引き下げ策が関係閣僚により議論され、19日夜にはボリソフ首相がCEZの免許剥奪も検討し、3月からは再エネに代え原発からの電気を規制料金対象の需要家に提供することで電気料金を8%引き下げると発表したが、国民の怒りは収まることがなかった。