やはり地球は温暖化しているようだ。欧州環境庁は過去10年間の欧州の気温は記録開始以来最高だったと11月に発表した。産業革命前との比較では欧州の気温は1.3度上昇している。温暖化は気温の上昇をもたらすだけではなく、異常気象を招くことがある。
1年前欧州は暖冬が続いていた。フランスの気象データでは、2011年11月は平年比+1.7度、12月は+2.2度、12年1月は+1.2度だった。しかし、一転2月には強烈な寒波が欧州を襲う。2月の気温は平年比-4.6度だ。この寒波は2011年6月に8基の原発を停止したドイツを停電寸前まで追い込んだ。この冬も気温次第では停電する可能性があるとドイツの電力系統運用者は警告を発している。
2基を除き原発を停止している日本もドイツのように気候次第では停電の可能性がある。それを避けることは可能だろうか。発送電を分離し電力を自由化すれば、供給と発電設備が増え、結果脱原発が可能と主張する政党が総選挙期間中にあった。しかし、自由化が脱原発の切り札になる可能性は極めて薄い。電話の自由化の例を引き、電力自由化が可能と説明する向きもあるが、電話と電気は異なることばかりだ。
2012年2月停電の危機に直面したドイツ
送電線網が国境を越えて連携している欧州では、電力融通は比較的簡単だ。原発を停止したドイツも近隣諸国と電力の輸出入ができる状態にある。特に隣国フランスは原発により全発電の80%を行っており、電力供給に余裕のある世界最大の電力輸出国だ。
しかし、12年2月の寒波はフランスを電力輸入国に追いやった。原発を発電の主体にしているフランスの電気料金は低廉だ。標準家庭の1kW時の料金は14.12ユーロセント。ドイツの料金25.41セントの半分程度だ。この安い電気料金のためにフランスでは暖房を電気で行う家庭が多い。寒波となれば、電力需要は急増する。
2月フランスの電力需要は急増した。1月にフランスは70億4200万kW時の電力輸出を行い、16億7200万kW時の輸入を行っていたが、2月には輸入が52億2200万kW時、出が45億400万kW時と、電力輸出国フランスが電力を純輸入する事態になった。ドイツからは16億9200万kW時の輸入を行いながら、輸出はわずか1億2400万kW時だった。ドイツでも寒波により電力需要は急増したが、頼みのフランスから電力は来ない。このため、ドイツが利用可能な発電設備の余剰能力が200万kWを切ってしまった。1億5000万kWの設備能力の2%にもならない停電寸前のレベルだった。11年6月に原発を8基停止したための供給力逼迫だった。この冬も気温次第では停電の可能性があり、13年1月末から2月初旬が危ないと系統運用者は警告している。