2024年7月16日(火)

World Energy Watch

2012年12月26日

発送電分離で供給は増えるのか

 多くの原発が停止したままの日本の電力供給の状況もドイツと同じ綱渡り状況だ。気温次第、あるいは発電所のトラブルが発生すれば、停電の恐怖が実際のこととなる。発送電を分離すれば脱原発が可能と言う一部の政治家の主張は正しいのだろうか。

 関西電力、中部電力などの地域電力会社は現在発電から送配電まで一体で運営している。このため、供給が自由化されている工場などの大口需要家に、新電力と呼ばれる特定規模電気事業者(PPS)が供給を行う場合には、地域電力会社が保有する送電線を利用する必要がある。利用料金を計算するために、送電部門の費用は地域電力会社の費用の中で分離されて計算されている。会計分離と呼ばれる方法だ。この方法では地域電力会社が保有する送電線を利用するのが煩わしい、また高い料金を要求されるとの不満が一部の新電力から出ている。

 発送電分離により脱原発が可能との主張の根拠は、送電部門を地域電力会社から分離し、送電線の利用を低廉な料金で容易にできるようにすれば、新電力、あるいは自社の工場用に自家発電設備を保有している企業が余った電力を販売するということだ。しかし、現在余っている埋蔵電力はなく、また分離しても送電料金が下がる保証はない。この主張は間違いだ。

新電力と自家発電の設備は余っているのか

表1 新電力の設備量と供給量
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 いま、地域電力会社が保有する発電設備は水力3610万kW、火力1億2830万kW、原子力4350万kW、その他46万kW、合計2億850万kWだ。これに対し、37社の新電力が保有する設備は212万kW。地域電力会社設備の1%分しかない。

 しかも、このうち、79万kWは製紙会社が保有する設備で、発電量の80%は自家消費されている。外販の電力は20%分だけだ。結局、新電力が保有する設備のうち外販に使える設備は150万kW相当分であり、その発電量は新電力の販売電力量の3分の1以下だ。新電力は販売電力量の3分の2を地域電力会社と自家発電設備から仕入れている。送電線が自由に使えるようになっても売れる電気はない。表-1の通りだ。


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