規制委員会も機能せず
ブルガリアの電力自由化から考えるべきこと
電気料金高騰が、空手の指導者であり、旧共産党指導者のボディーガード業からソフィア市長を経て首相に上り詰めた強面のボリソフ首相を引き摺り下ろすことになった。
首相辞任を伝えたインターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙は「共産政権崩壊以降、ブルガリアではマフィアによる犯罪があったが、1989年の共産党崩壊時の独裁者ジフコフ追放時でも政治的な暴力はなかった。今回の首相辞任は政治的な暴力によるものだ」と伝えている。
電気料金高騰が首相辞任とブルガリアの政治的な混乱を招くことになったが、その遠因は自由化にある。むろん自由化すればブルガリアのようになるということではない。しかし、総括原価主義を離れれば、電力会社は料金を自由に設定できる。ブルガリアのように競争がなくなれば料金設定は自由だ。ブルガリアでは規制委員会を作り料金をチェックすることになっていたが、その委員会は機能していなかったようだ。
電力自由化により料金上昇の影響を大きく受けるのは貧困層ということも、ブルガリアの出来事は示している。所得の低いブルガリアの人達は何故収入に合わせた電気の使用をしなかったのだろうか。寒波が来たから我慢できなかったのだ。電気代が上がっても、節約するには限度がある。所得が低い家庭ほど節約する余地は少ないが、寒波が来れば、必需品の電気は使わざるを得ない。
電気料金上昇の影響
「カリフォルニア電力危機」原因の誤解
いま議論されている電力自由化論を、現実の経営の立場で考えると、あり得ないような想定が行われていることに驚くことがある。例えば、電力市場が自由化されていれば震災後の計画停電を避けることができたとの主張がある。
東電以外の会社の発電設備があれば供給できたという説は、発電所の所有者が変わっても発電所の場所が変わる訳ではなく論理的でないので議論に値しないが、自由化の主張は「自由化市場では供給が少なくなれば電気料金が高騰し、節電が進み、さらに自家発などの余剰設備から供給が出てくるので、需給がバランスした」というものだ。