送電料金を変えれば地産地消が進むのか
自由化論、発送電分離論の主張は、送電線を自由に使用できるようにすれば発電設備が増える、さらに送電線の混雑が少ない場所の送電料金を安くすればその場所に発電所ができるというものだ。例えば、東北から首都圏への送電は多いが、首都圏から東北への送電は少ないから、首都圏に発電所を建設すれば送電料が安くなり地産地消が進むという説だ。
発電設備のように長期に亘り償却が行われる場合には、将来の不確実性が少ないことが投資の条件なので、自由化により設備の建設が進むかどうかが疑わしいことは『停電の恐怖に怯えるドイツは日本の将来像か 発送電分離で脱原発は可能?』(http://wedge.ismedia.jp/articles/-/2473)で説明した。それならば、送電料金が安ければ発電所建設のインセンティブになるのだろうか。
発電コストに占める送電料金の割合より、建設に必要な土地代、環境対策費用などが建設場所決定の要因としては大きいだろう。送電コストが建設場所の選定に大きな影響を持つのであれば、都市圏を持つ電力会社はわざわざ遠い場所に発電所を建設していないはずだ。送電コストよりもっと大きな要因があったということだ。送電費用に差を付けることで地産地消が進むというのも眉唾だ。
電力自由化理論
理論だけでなく現実を見極める必要性
経済学の電力自由化理論を現実の経営の視線でみると、おかしなことが多い。今の総括原価主義には無駄なコストも含まれることがあるだろう。しかし、ブルガリアで言われているように電力会社の不当な利益により料金が高騰することはない。電気料金の査定に利用されるヤードスティック方式は経営の効率化を図る指標だ。
我々が必要なのは安定的で競争力のある電気料金だ。自由化の結果、電気料金が下がる可能性は、欧米のように国外、州外からの電力供給がない日本ではないだろう。供給の安定性が阻害される可能性のほうが大きいのではないか。安定的で競争力のある電気料金をどのように得るのかをよく考えるべきだ。社会実験を行う余裕は今の日本経済にはない。
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