2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年3月11日

 江沢民は政治局を掌握し、他方、胡錦濤は党中央軍事委員会を握っていた。習の属する「太子党」と言われるものの実態はそれほど明確ではなく、習には政権基盤というほどのものがない。とすれば、自分の地位を固めるために、軍に依存しようとするのは自然かもしれない。

 中国のシステムのなかで、解放軍が最も重要な派閥となる日が来るのはそう遠くないだろう。軍は党内派閥に比べると、あらゆる点で明瞭に団結を維持しているからである。

 オバマ大統領は第2次政権の就任演説のなかで、「自分たちが関与政策をとるのは、ナイーブなためではなく、疑念や恐怖を取り除き、平和裏に物事を解決するため」との趣旨を述べている。しかし、中国のように領土、領海について妥協の余地がないという習の拡張的主張に対しては、関係国としては反対する以外あるまい、と論じています。

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 この論説は、中国の党と軍の関係という、古くて新しい問題について述べたものです。政権基盤の弱い習近平政権が軍への依存度を高めつつあるというチャンの見方は、それほど具体的な多くの証拠によって裏付けされているわけではありませんが、今日の実態に相当近いように思われます。

 中国指導部においては、これまでも時に、不規則発言のような形で、軍将官(主に退役軍人)が対外的に強硬論を吐き、それに対し、あとで党指導部が柔軟路線で抑制的に対処するという形が見られました。硬軟両様の使い分けです。しかし、習政権においては、党、軍ともに強硬路線を主張し、行動する場合が多くなったように思われます。習が強硬論を主張し、軍が領土、領海で拡張的行動をとることは、持ちつ持たれつの関係ということになります。

 このことは、周辺諸国から見ると、中国との不測の衝突の事態が、特に海上、空中において起こりうる確率がそれだけ高まったことを意味します。

 薄煕来の最終処分がまだ決まっていないことなどからも想像出来る通り、党指導部内の派閥の分裂状況は現在も基本的には続いていると見られますが、このような状況がこれからも続くならば、ゴードン・チャンのいうように、今後、人民解放軍は、「団結した重要な派閥」としての発言権をますます強めていくことになりそうです。

[特集] 習近平と中国 そして今後の日中関係は?

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