2024年4月25日(木)

ヒットメーカーの舞台裏

2013年4月4日

 「振動レスシステム」の商品化にめどが立った時点で、開発チームは「振動」という切り口をクローズアップするため、外部機関による評価を付けることにした。乳幼児向けの商品が主体のコンビでは、新たな機能や性能などには、顧客に安心してもらえるよう、客観的な評価を求め、提示するのが慣例になっているのだ。

 杏林大学医学部教授の古賀良彦に監修してもらった検証試験では、エッグショックを用いた場合とそうでない場合では搭乗者、つまり赤ちゃんへの振動を約3割低減できることが分かった。それにより、走行時に赤ちゃんが感じるストレスは約4割減るという結果だった。

 従来の商品は大人の視点からの研究開発になりがちだった。しかし、細谷の綿密なマーケット調査と分析が、開発者の間では埋没していた「振動」という、いわば赤ちゃん目線のキーワードを浮かび上がらせた。それは、母親の胸にストンと落ちるアピール力をもっていた。(敬称略)

■メイキング オブ ヒットメーカー 細谷周史(ほそや・しゅうし)さん
第2商品開発室 第3開発グループ リーダー

1977年生まれ
東京都目黒区に生まれる。図画工作が得意科目で、ブロック遊びやプラモデルに熱中した。秘密基地を作るのが大好きだった。小学校では剣道にも打ち込む。絵を描くのも好きだったので、中学校では美術部に所属した。都立高校に進学後、細身の体を鍛え直したいと一念発起し、ラグビー部に入部した。ポジションはセンターで、キャプテンを務めた。
1996年(19歳)
厚生労働省が所管する職業能力開発総合大学校に進学する。転職者や求職者向けに職業訓練(技術)指導を行う「職業訓練指導員」を養成する大学で、実技科目が充実していた。木工、塗装、造形(デザイン)、うるし塗りなどの実技を学んだ。大手照明会社にインターンシップした際、企業でのモノづくりの面白さに開眼、指導員になるより民間企業への就職を望むようになった。
2000年(23歳)
コンビに入社。ほ乳瓶、食器などの企画・開発に携わる。就職活動当時、同社の商品企画職の募集は締め切られていたのだが、営業職の説明会にもぐりこみ、商品企画で応募させて欲しいと熱望したことが奏功した。
2009年(32歳)
チャイルドシート開発を経て、現在のベビーカー開発へ配属される。09年に長女が誕生し、実体験を通じて「赤ちゃんを守りたい」と強く感じるようになった。現在は2児の父。

(写真:井上智幸)

[特集] ヒットメーカーたちの物語

◆WEDGE2013年4月号より

 

 

 

 

 

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