とはいえ、陸海空軍(海兵隊の予算は海軍の予算に含まれる)それぞれに割り当てられた予算が7~8%削減されている今年、しわ寄せはいたるところに出てきている。海軍では、中東地域に展開している空母攻撃群は通常よりも1つ減っているし、艦船や航空機のメンテナンスや後方支援などにかけられる予算も、減っている。空軍ではパイロットの訓練飛行時間が20万時間以上減らされ、空軍省に務める背広組のリストラ計画ができ、施設の整備も、不要不急のものは先送りされた。陸軍でも、パイロットの訓練飛行時間の削減や、背広組職員のリストラ、兵士に対する訓練教育プログラムの見直しをせざるを得なくなった。
3月28日に国防省が公開した2014年度予算に関するブリーフィング資料によれば、強制削減措置が発動されている現在においても、中東やアジア太平洋地域に前方展開している兵力の活動予算については、極力、これを守る方向で配慮がされているようだ。
しかし、3月5日に下院軍事委員会で証言したサミュエル・ロックリア太平洋軍司令官は、「強制削減および継続決議の下での運用予算の不足の影響を受け、アジア太平洋地域へのリバランスに向けた努力が悪影響を受け始めるかもしれない」と述べ「各軍の予算が削減されたことで、太平洋軍に属する各軍の部隊の訓練の頻度は著しく低下する。ローテーション展開している部隊の総数も減る。これは、太平洋軍に課されたミッションを遂行し、危機に対応し、戦域(アジア太平洋地域)における関与戦略を支援する能力の弱体化につながる」と述べ、「強制削減即の結果、我々が前方展開する兵力を安定させ、地域の同盟国やパートナーとの関与を強化しようとしている極めて重要なこの時期に悪影響を及ぼす」と切実に訴えている。
不確定要素の多い来年度予算
このような中、オバマ大統領は4月10日に来年度(2014年度)予算を発表し、これに合わせて国防省でも来年度予算の概要の説明が行われた。国防省が要求する国防予算(戦費を除く)は6150億ドルで、前年度の要求額とほぼ同レベルだ。軍種別にみると海軍(海兵隊予算を含む)が1550億8千万ドル(今年度要求額比マイナス0.1%)、陸軍が約1300億ドル(今年度要求額比マイナス4%)、空軍が1440億4千万ドル(今年度要求額比プラス3%)となっている。陸軍が他の軍種に比べて予算の減額幅がかなり大きいことから見ても、2012年1月に発表された「国防戦略の指針」で打ち出された「陸上兵力から空海軍力へ」という方向性を裏付けるものとなっている。
但し、この2014年度予算も大きな不確定要素に包まれている。現在の予算案は、今年の10月1日、つまり2014年度が始まるまでに議会とホワイトハウスの間でBCAの代替案となるような財政再建案が合意されることを前提に作成されている。つまり、sequestrationが続くとは想定していないのだ。